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増補・話芸きまり文句辞典

落語・講談によく出ることば(改装中)

【利いた風】きいたふう)気の利きたる風の意──【諺語大辞典】通暁してもいないくせに通暁しているふりをすること。知ったかぶったり、利口ぶったりする者を嘲っていう語。半可通。──【江戸語の辞典】(講談・小金井小次郎「何を利いた風なことを吐かしやがる」)

【既往咎めず】きおうとがめず)「既往は咎めず」過ぎ去った出来事についてとやかくとがめ立てするよりは、将来を慎むことが大切であるの意。「論語」より。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・岩見重太郎「既往は咎めずと申す古聖の訓えもある」)

【気があれば目は口ほどにものを言う】きがあればめはくちほどにものをいう)川柳。「目は口ほどに物を言う」情のこもった目つきは、口で話すのと同じほど相手に気持ちを伝える。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・越後伝吉「早く叩き出してお仕舞ひと、口でそう云はねえにしろ、目は口ほどに物をいふ」)落語:盃の殿様、成田小僧、三十石夢の通い路、牡丹燈籠 講談:安政三組盃、岡野金右衛門朝顔日記、越後伝吉、赤穂四十七士

奇貨措くべし】(きかおくべし)よき品物なれば、買込んで置きて、大利を獲得すべしとの義。──【諺語大辞典】 「史記」より。(講談・金田屋お蘭「善兵衛が奇貨措くべしだと唆り立てますので」)

【木から落ちたる猿の如し】きからおちたるさる・ましらのごとし)「木ヲ離レタル猿ノ如シ」ともいう。頼む所の位置よりも離れてせんすべなきに喩う。──【諺語大辞典】(講談・左甚五郎「これを見もし聞きもした綾江は、木から落ちた猿同様、泣くにも泣かれぬ始末」)落語:つるつる 講談:南部坂雪の別れ、伊達誠忠録、越後伝吉、妲己のお百、大岡政談お花友次郎

【気から病が出る】きからやまいがでる)「病は気から」に同じ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・関東七人男「気から病が出るというからしっかりしろ」)落語:かつぎ屋五兵衛、応挙の幽霊

【危急累卵よりも甚し】ききゅうるいらんよりもはなはだし)「危うきこと累卵の如し」卵を積み重ねたる如く危きさま。──【諺語大辞典】(講談・朝顔日記「實に主家の危急累卵よりも甚だし」、岩見重太郎「惡い奴ながら二人も相当の使い手なれば、見ていて岩見の危きことは累卵の如く」)

【聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥】きくはいっときのはじ、きかぬはまつだいのはじ)「聞クハ一旦ノ恥、聞カヌハ末代ノ恥」人に問うことを恥ずるなかれ、一時の恥を思いて問わざれば、終身の悔となるべし。──【諺語大辞典】(落語・てんしき「それは感心だ。聞くは一時の恥じ、聞かぬは末代の恥じといつてな」)《い》落語:皿屋敷、雁風呂、馬のす

【聞けば聞き腹、きんたまも釣り方】きけばききばら、きんたまもつりかた)【意味】「聞ケバ聞腹」聞かざれば知らず、聞きたる上は怒らざるを得ず。「睾丸モ釣リ方」物にはそれぞれ扱い方ありとの義。──【諺語大辞典】(落語・ちきり伊勢屋「ほんとうの情夫か、といわれたからグッとしゃくにさわって睾玉も釣りかただから蒲團の上に起き上がつたヨ」)落語:三軒長屋、猫忠、真景累ヶ淵 講談:伊賀の水月、祐天吉松

【機嫌気褄を取る】(きげんきづまをとる)(「機嫌を取る」「褄を取る」の慣用から、口調を整えていった語)「機嫌を取る」に同じ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・安政三組盃「人の機嫌気づまを取ることが上手で」)落語:文七元結

【騎虎の勢い】きこのいきおい)中途にて止むに止まれぬ有様に喩う。──【諺語大辞典】(講談・清水次郎長「と藤左衛門、だんだんに説き諭しましたが、安濃徳次郎は騎虎のいきおい」)講談:梁川庄八、笹川繁蔵、西郷南洲

【木静かならんと欲すれども風止まず、子養わんと欲すれども親待たず】(きしずかならんとほっすれどもかぜやまず、こやしなわんとほっすれどもおやまたず) 木が静になろうと思っても、風がやまないうちはどうにもならない。やっと親孝行ができると思った時には、もう親は死んでしまっていて、どうにもならない。 親の生きているうちに孝行せよの意。また、思うようにならないことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・近江聖人「或日、皐魚傳を讀んで、『木静かならんと欲すれども風止まず、子養はんと欲すれども親待たず』といふ語を見て非常に感じて」)

【雉子も鳴かずば討たれまい】きじもなかずばうたれまい)甲高い声で鳴いたばかりに雉は撃たれてしまった、もしも鳴かなかったらその所在をさぐられることもないから、撃たれることもなかったろうに。無用の発言をしなければ、禍を招かずにすむことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・相馬大作「ざまア見やがれ、雉子も鳴かずば打たれめえにというのは、手前のことだ」)落語:鼻がほしい、蛸芝居 講談:寛永三馬術安政三組盃、徳川天一坊 

【鬼神に横道なし】きじんにおうどうなし)「神明ニ横道ナシ」とも。神は不条理不正当の事を為さず。──【諺語大辞典】 「毛吹草」にもある。(講談・水戸黄門鬼神に横道なしと云ふに、何ぞみだりに騒がしく、汝知らずや我が心、國土を守る誓あり」)《い》

【着たきり雀】きたきりすずめ)着たる物一枚限りにて、他に衣服なきを、舌切雀にかけていう秀句。──【諺語大辞典】(落語・酢豆腐「てめえのなりはなんだ? 年がら年中その着物を着てる着たきりすずめじゃねえか」)落語:たらちね

【汚う働いてきれいに食え】きたのうはたらいてきれいにくえ)職業的身分は低くても、懸命に働いて精神は気高くして暮らせ。また、けちけち金を貯めたり、不条理な金儲けをしても、使う時だけはいさぎよくきれいに使えの意。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・紙屑屋「匂いぐらいなんでもないこっちゃ。汚のう働いて、きれえに食え、ホラ、白い紙」)落語:梅若礼三郎 講談:藪原検校

義太夫は音曲の司】ぎだゆうはおんぎょくのつかさ)(落語・猫の忠信「昔から義太夫というのは音曲の司やてなことを言いまして」)

【気違いに刃物】きちがいにはもの)極めて危険なる喩。──【諺語大辞典】(落語・猫久「よく『気違えに刃物』なんてことを言うけどもさ、ねえ、渡すことァねえやなァ」)落語:三軒長屋、講談:赤穂四十七士

【切っても切れない五本の指】きってもきれないごほんのゆび)「五本の指」五本の指のように、切っても切れない縁である。親子兄弟などの肉親をいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・清水次郎長「その上、おきくさんは、伊勢の安濃徳と切っても切れねえ五本の指、血のつながった実の妹だ」)講談:笹川繁蔵

【狐と狸】きつねとたぬき)どちらも人を化かすといわれるところから、くせもの同士の意にいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・茶の湯狐と狸の化かし合い、お互いに腹の探り合いというわけで……」)

【狐は奸智に長けたもの、狸は愚のもの】きつねはかんちにたけたもの、たぬきはおろかのもの)(落語・狸の釜「狐は奸智に長けたもの、狸は愚のものだと云つてあります」)

【狐は七化け、狸は八化け】きつねはななばけ、たぬきはやばけ)狐より狸の方、人を魅すること一段上なりという。──【諺語大辞典】(落語・田能久「ことわざにもいうとおり、狐は七化け、狸は八化けということがあるが、なにかおれの前で狸なら狸らしく化けて見せろ」)落語:紋三郎稲荷

【気で気を養う】きできをやしなう)(落語・貧乏花見「下には立派な長襦袢を着てると見たらええやないか。なァ、気で気を養うのや」)

【木で鼻をくくったような】きではなをくくったような)「木デ鼻ヲコクッタヨウ」にべもなくさっぱりしたる事、冷然として人の依頼などに取り合わぬ類の形容にいう。──【諺語大辞典】(講談・鈴木重八「せっかく俺が世話をしてやろうというのに、木で鼻をくくった挨拶とは呆れたな」)落語:真景累ヶ淵 講談:木村長門守、鼠小僧次郎吉

【気に入らぬ風もあろうに柳かな】きにいらぬかぜもあろうにやなぎかな) 仙厓和尚の句。「やなぎは風にしなふ」と「毛吹草」にある。(落語・天災「『“気に入らぬ風もあろうに柳かな”でわかりましたか?』『なんだかちっともわからねえ』」)

【木にも萱にも心を置(措)く】きにもかやにもこころをおく)世を憚りて用心すること。──【諺語大辞典】 「木にも草にも~」「茅にも石にも~」「草にも木にも~」などともいう。(講談・中村勘助「あゝあゝ源五、木にも萱にも心を措く御身達の心中、左こそと推し量られて落涙いたす」)講談:大石内蔵助中村勘助佐倉宗五郎、木村長門守、南部坂雪の別れ

【木に餅の生ったよう】きにもちのなったよう)非常に都合よくうまき事をいう。──【諺語大辞典】(講談・祐天吉松「エゝ三十兩、それは木に餅の生つたやうな話だ」)

きのうと暮らし今日とすぎる】(きのうとくらしきょうとすぎる)(講談・小山田庄左衛門「きのうと暮らし今日と過ぎるうちに、お花が産みおとしたのが男の子で」)

【昨日の淵は今日の瀬】きのうのふちはきょうのせ)昨日まで淵であった所でも、水の流れが変わると瀬になってしまう。人の世の変転さだめないことのたとえにいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】、 「飛鳥川ノ淵瀬」人世の栄枯常なきにいう。──【諺語大辞典】。古今集(巻十八)「世の中は何か常なる飛鳥川昨日 の淵ぞ今日は瀬となる」(よみ人知らず)(講談・梁川庄八「白石殿の御下城であるな、昨日の淵は今日の瀬と、變り易きは世の習」)講談:慶安太平記大高源五

【茸を取った山は忘れない】きのこをとったやまはわすれない)「菌取った山は忘れられぬ」一度利を得しことは忘れ難し。──【諺語大辞典】(講談・清水次郎長「實は濱松で恁う恁う、茸を取つた山は忘れないといふ比喩があるが、モウ博奕などといふものは、するものぢやないと思つて」)講談:野狐三次、越後伝吉

【気の毒な死に方をした人の墓に参って樒の葉を三枚もらってくると無尽に当たる】きのどくなしにかたをしたひとのはかにまいってしきみのはをさんまいもらってくるとむじんにあたる)(落語・真景累ヶ淵「そういう気の毒な死に方をした人のお墓にお参りをして、樒の葉を三枚いただいてくると、無尽にあたる呪いになるなどと申しますから」)

【気の張り弓の弦切れて】きのはりゆみのつるきれて)「気を張る」心を緊張させる。気持ちをひきしめる。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・赤垣源蔵「『何、おったか』気の張り弓の弦切れて、ドウと尻居に腰落とし」)講談:清水次郎長

【木の股から生まれた人間じゃない】きのまたからうまれたにんげんじゃない)「木の股から出たよう」男女の情を解せざるをいう。──【諺語大辞典】(落語・縮み上り「夫だつて私も木の股から生れた人間じやァございませんから、美い女を見れば又変な気も起ります」)講談:猿飛佐助

【木の実は元】きのみはもと)「木の実は木の元へ落つる」物皆其本に帰すること。──【諺語大辞典】(講談・水戸黄門「恐らく木の實は元といふことがあるから、貴下の所へ歸つて行くであらうが」)講談:新吉原百人斬り

【気は心】きはこころ)小事なりとも他人のために好意をつくしたりと思えば、わが心を満足せしむ。──【諺語大辞典】(落語・掛取万歳「なにもそっくりとは言わねえよ、気は心だ。まあちょいとでも形をつけてくれりゃいいんだから」)落語:寄合酒、睨み返し、位牌屋 講談:妲己のお百

【気は長く勤めは堅く色薄く食細うして心広かれ】きはながくつとめはかたくいろうすくしょくほそうしてこころひろかれ) 水戸光圀公が作ったという歌。(講談・水戸黄門「後に御隠居遊ばして、太田の西山へ引退なされた時に、常にお床にお掛けになつた軸が、“氣は長く勤めは堅く色薄く食細うして心廣かれ”」)講談:西行鼓ヶ滝

【君がため薪割竹売夜蕎麦うり身を惜しまざる義士の働き】きみがためまきわりたけうりよそばうりみをおしまざるぎしのはたらき) 三村次郎左衛門大高源五杉野十平次(または富森助右衛門前原伊助)の逸話による。(落語・滑稽義士「此の人が、忠義な御家来でございまして、“君がため薪割竹売り夜蕎麦うり身を惜しまざる義士の働らき”此の三村といふ人は、薪割り稼業をやつたといふ」)

【君君たれば(たらずんば、たらずとも)臣臣たり(たらず、たれ)】(きみきみたればしんしんたり) 「君君たり臣臣たり」 君主は君主としての道を尽くし、臣下は臣下としての道を尽くすこと。それぞれの本分を尽くすこと。これが社会の秩序を維持し政治を安定させる根本である。 孔子のことば。「君、君たらずといえども臣、臣たらざるべからず」主君に主君としての徳がなくても、臣下は忠義を尽くして仕えなければならないという儒教 の戒め。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・名月若松城「まだ主従の御縁は切れておりませぬ。君、君たらずとも、臣、臣たれ」)講談:寛永三馬術相馬大作

【君、臣をみること塵芥の如くんば、臣に君をみること怨讐(讐敵の如し】きみ、しんをみることじんかいのごとくんば、しんにきみをみることしゅうてきのごとし) 「君、臣を視ること土芥の如くなれば、臣、君を視ること寇讎の如し」君主が臣下の価値を認めないで冷遇すると、臣下は主君を仇のように憎む。「孟子」によ る。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・木村岡右衛門「さような主君(かみ)に遠慮して、生涯浪人をして操をたてて何とする。君、臣をみること塵芥の如くんば、臣、君をみること怨讐の如しとやら」)講談:磯貝十郎左衛門

【君に慶事あれば臣これを賀び、君憂うれば臣これを共にす】きみにけいじあればしんこれをよろこび、きみうれうればしんこれをともにす)(講談・曾呂利新左衛門「諺に申しまする、君に慶事あれば臣これを賀び、君憂うれば臣これを共にす、と申すこともござりますれば……」)

【君に別れて松原行けば、松の露やら涙やら】きみにわかれてまつばらいけば、まつのつゆやらなみだやら)(落語・黄金餅「夫れ倩ら惟れば汝元来凸口(ひょつとこ)の如し、君に別れて松原行けば、松の露やら涙やら、ヒヨコヒヨコマのホイ」)

【君は一代、御家は末代】きみはいちだい、おいえはまつだい)(講談・両越大評定「君は一代、御家は末代、小栗美濃恐れながら君と差違へ、若君を以て御相續を致し」)

【君辱めを受ける時は臣死す】きみはずかしめをうけるときはしんしす)「主辱めを受ける時は~」と も。主君が人から恥辱を受けたならば、臣下たる者は命を賭してその恥をすすがなければならない。臣下は、主君と生死苦楽を共にすべきだとする、中国・戦国 時代の忠臣・范蠡のことば。──【故事俗信ことわざ大辞典】編者注:「主の恥は家来の恥、家来の罪は主の罪」(講談・赤穂四十七士伝)ともいう。(講談・ 寛永三馬術君辱めを受くる時は臣死すの習ひ、藩中の若殿輩はすんでに各々方に對し刃傷に及ばれんとしたが」)講談:磯貝十郎左衛門、忠僕直助、笹野名槍伝、相馬大作

【君は船なり臣は水なり】きみはふねなりしんはみずな)「荀子」より。「水よく舟を載せ、又よく舟を覆す」。主君と臣下は舟と水の関係のようなものである。水が舟を浮かべるように臣下は主君を戴いて支える。しかし時には波浪が舟を沈めるように臣下が主君を覆すこともある。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「毛吹草」に「君は舟臣は水」とある。(実録・妲妃のお百「君は船なり臣は水なり、水能く船を浮べ又能く船を覆すと、世の諺ざに云如く、去ば中川采女は我君に酒色を進め參らせて」)

【君召せば駕を待たずして行く】きみめせばがをまたずしてゆく)(落語・そばの殿さま「君召せば駕を待たずして行くという勢いでそこへ居並んだから、殿さまもニコニコ笑っていらっしゃるが」)

【きやきや】きやきや)癪などの痛むさま。きりきり。──【江戸語の辞典】(講談・安政三組盃「昨夜より胸がキヤキヤ痛んで」)

【九死の中に一生を得る】きゅうしのなかにいっしょうをえる)死なんとして、辛くも生きたるをいう。──【諺語大辞典】(講談・鋳掛松「九死の中に一生を得るといふ楽しみがあるからやるんだが、其の覚悟が出来るか」)

【宮女三千ことごとく西施のひそみに倣う】きゅうじょさんぜんことごとくせいしのひそみにならう)「顰(ヒン)ニ倣ウ」いたずらに人真似すること。──【諺語大辞典】(落語・姫かたり「雨に悩める梨花一枝、宮女三千ことごとく西施のひそみに習ったというも道理なるかな」)

【九仞の功を一簣に欠く】きゅうじんのこうをいっきにかく)簣は土籠なり。事の成るに垂んとして、これを遂ぐる能わざるをいう。──【諺語大辞典】(講談・天保六花撰「とんでもない疑いをこうむると、今度はこっちの身があぶねえ、九仞の功を一簣にかくてえやつだ」)講談:吉良屋敷替え

【窮すれば通ず】きゅうすればつうず)勢窮まれば、却て工夫の生ずるものなるをいう。──【諺語大辞典】(講談・安政三組盃「『そうよのう』としばらく考えておりましたが、窮すれば通ずるというのはこのことで」)講談:北斎と文晁

【窮鼠却って猫を噛む】きゅうそかえってねこをかむ)勢窮する時は、弱者却て強者に抵抗して、之に勝つことあるをいう。──【諺語大辞典】(講談・夕立勘五郎「窮鼠却つて猫を喰むの譬、勘五郎さへ斬つちまへば宜いと思ふから、勘五郎へ斬つて掛りました」)笹野名槍伝、太閤記国定忠治

【窮鳥懐に入るときは猟師もこれを獲らず】きゅうちょうふところにいるときはりょうしもこれをとらず)困窮して我に投じ来る者は、残酷に取扱い難き人情をいう。──【諺語大辞典】(講談・幡随院長兵衛「窮鳥懷に入れば、獵師もこれを殺さずといふ譬がある。折角落ちのびて來たものを、あのまゝ土佐へおくるといふのは、日頃の先生の態度として、甚だ面白うない」)講談:寛永三馬術、笹野名槍伝、猿飛佐助、岩見重太郎、本所五人男、猿飛佐助

【牛刀を以て鶏を裂く】ぎゅうとうをもってにわとりをさく)(牛を切る大きな包丁で小さな鶏を割くの意)小さな事を処理するのに大げさな手段を用いるたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・幡随院長兵衛「イヤ、待つた、牛刀を以て鶏を裂くにア當らねへ、萬事は私しに任しておくんなせへ」)

【久離切っての勘当】きゅうりきってのかんどう)「久離を切る」親子、または親族などの関係を永久に切る。勘当する。江戸時代、法律的には勘当と区別されていたが、一般には同意に用いられている。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・唐茄子屋「昔は、道楽息子はたいてい久離を切ったもんで、ただ今ならメロンでも切りそうなもんでございますけれども」)落語:腕食い、山崎屋、船徳 講談:安政三組盃、大島屋騒動

【恐惶謹言】きょうこうきんげん)恐れながらつつしんで申し上げるの意。手紙の結びに記して敬意を表わすことば。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・たらちね「めしを食うのが恐惶謹言なら」)

【刑状】きょうじょう)「兇状」(犯罪の意)処罰。仕置。──【江戸語の辞典】編者注:凶悪犯を「凶状持ち」(講談・清水次郎長「ウン、ちょっと俺のところへ兇状持ちが逃げこみやがった」、天保六花撰)という。(講談・小金井小次郎「喧嘩刑状で人を斬つて土地を賣つた人間だい」)

【狂人狂って不狂人共に狂う】きょうじんくるってふきょうじんともにくるう)「狂人走レバ不狂人モ走ル」雷同の喩。──【諺語大辞典】「狂人はしれは不狂人もはしる(狂人走れば不狂人も走る=こちらのほうが正統か?)」と「毛吹草」にもある。(講談・清水次郎長狂人狂つて不狂人共に狂ふといふ事が御座います。狂人の醉つぱらひですから、御勘辨を願ひます」)講談:天保六花撰

【京のお茶漬、高松のあつかん】きょうのおちゃづけ、たかまつのあつかん)「京のお茶漬け」京都の人 は、客が帰ろうとするころ、ご愛想までに食事をすすめる。──【故事俗信ことわざ大辞典】、「京ノオ茶漬」京人は吝嗇にして、客の去らんとするに臨み、茶漬にても食ひ行けと挨拶すとの意。──【諺語大辞典】 高松ではお客に対して「おかまいしません」という意味で「あつ かわん」と言うが、これを「熱燗」と聞き間違えて、お酒を振る舞ってくれるものと勘違いする人がいる。(落語・京の茶漬「その時分は行った先、行った先で みな言葉やら挨拶やらも違うたものらしい。『京のお茶漬、高松のあつかん』という言葉がありました」)

【京の着倒れ、大阪(坂)の食い倒れ】きょうのきだおれ、おおさかのくいだおれ)京都は衣服に驕り、大阪は飲食に驕るをいう。之に続いて堺ノ建倒レともいう。──【諺語大辞典】 「~神戸の履倒れ」とも続くらしい。(落語・唐茄子屋「京の着倒れ、大阪の食い倒れということを申しまして、京都というところは土地の人も着物にお金をかけますもんで、友禅とか西陣なんという特殊の染物がございますくらい」)講談:杉野十平次

【凶は吉に返る】きょうはきちにかえる)(落語・かつぎや「凶は吉に返ると申しますからと番頭になだめられると」)落語:寿限無

【今日は人の身明日は我が身】きょうはひとのみあすはわがみ)「今日ハ人ノ上、明日ハ我身ノ上」患難災厄はいつ我身の上に来るとも知り難し、他人の身の上の事なりと、おろそかに思い過ぐべからず。──【諺語大辞典】(講談・難波戦記冬合戦「アゝ今日は人の身明日は我身、實に戰場といへるものは、考へて見ればあはれ果敢ないものである」)

【喬木は風に折らる】きょうぼくはかぜにおらる)「喬木風に折らる」丈の高い木が風の害にあいやすいように、人の上位にあると、嫉妬などを招きやすいことをいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「高木は風に揉まれる」とも。(講談・笹野名槍伝「一先づ武者修行を言ひ立つて此の地を立退き給へ、喬木は風に折らる」)

【御寝】ぎょし)正しくは「ぎょしん」と読む。貴人が寝ること(尊敬語)。──【広辞苑四版】(落語・錦の袈裟「御寝なさっていらっしゃいますようで」)

綺羅星の如く】きらほしのごとく)「キラ星ノ如ク」星の如くつらなり輝くをいう。キラは星のキラキラする意。──【諺語大辞典】(講談・村越茂助〜誉れの使者「左右には大勢の諸大名が綺羅星の如く居並んでおります」)

【きりきり】きりきり)事を速やかになすさま。さっさと。──【江戸語の辞典】(講談・安政三組盃「きりきり金を出せ」)

【義理と褌は欠くことができない】ぎりとふんどしはかくことができない)「義理ト褌カカサレヌ」人の世に処する義理を欠くべからざること、猶男子たる者の褌をせであるべからざる如し。「義理ト褌カカネバナラヌ」此カクは為すの意にて、義理を守り、褌を掻かずばあるべからずとの意なり。──【諺語大辞典】(落語・肥瓶「『あんなに世話になってるンだ。なんかの時にゃァ返さなくちゃァいけねえ』なんてェ……義理と褌は欠くことができない」)《い》

【斬り取り強盗は武士の習い】きりとりごうとうはぶしのならい)乱世の諺なり。──【諺語大辞典】、人を殺して金品を奪い取ったり強盗したりすることは武士には珍しくないことである。流浪零落した武士が生計のために言った口実。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・高田の馬場「『切盗り強盗武士の習い』などと申して、めったやたらに人を殺傷る、その折受けた傷がな」)落語:粟田口、真景累ヶ淵 講談:水戸黄門、幡随院長兵衛、笹野名槍伝

【義理は義理、仇は仇】ぎりはぎり、あだはあだ)(講談・国定忠治「扨仕打の面白くねえことがある。義理は義理、仇は仇だ」)

【義理も人情も儀礼も欠く「三欠くの法」で金を貯める】ぎりもにんじょうもぎれいもかくさんかくのほうでかねをためる) 「金は三欠ニタマル」義理人情交際の三者を欠損させでは富裕にならず。──【諺語大辞典】(実録・大岡政談安間小金次「世に三欠との喩の如く義理を欠き恥を欠き事を欠くを何とも思はず」)落語:片棒 講談:天保六花撰

麒麟も老いぬれば駑馬に劣る】きりんもおいぬればどばにもおとる)(「麒麟」は、名馬。「駑馬」は、のろい馬)すぐれた人物も年老いては、その働きや能力が普通の人にも及ばなくなることのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「毛吹草」にもある。(講談・柳生三代「イヤ最早世に捨てられた二天玄信、麒麟も老いては駑馬に若かずとか」)講談:伊賀の水月、笹野名槍伝、岩見重太郎、寛永御前試合

【義を金鉄に比する】ぎをきんてつにひする)(講談・木村長門守「双方共に名を惜しみ、義を金鐵に比する名譽の郎黨が、百戰錬磨の勇を揮つて戰ふ事であるから」)

【義を好むは江戸の常】ぎをこのむはえどのつね)(講談・寛政力士伝「其處で此の稲川の事が知れ渡ると、義を好むは江戸の常、稲川の評判は大したものでございます」)落語:高尾

【奇を好むは人情】きをこのむはにんじょう)「珍しいもの好きは江戸の常」(講談・小林平八郎、落語・死神)とも。(講談・梁川庄八「奇を好むは人情、況して水魔退治の噂を聞き傳へて居りますから」)落語:高尾、死神 講談:本所五人男、小林平八郎

【義を見てせざるは勇なきなり】ぎをみてせざるはゆうなきなり・いさみなし)人のなすべき道を、怯れ避けて為さざるは、勇気なきに由る。[論語]為政編。──【諺語大辞典】(講談・俵星玄蕃義を見てせざるは勇なきなり、浪人は浪人同志、内蔵助殿に御助力しよう」)講談:水戸黄門、梁川庄八、寛永三馬術、笹野名槍伝、柳生三代、勤王芸者、岩見重太郎、山中鹿之助

【槿花一朝の栄、廬生が邯鄲一睡の夢】きんかいっちょうのさかえ、ろせいがかんたんいっすいのゆめ)「槿花一日(晨)の栄」(「槿花」はムクゲの花。またアサガオの異称)槿花は朝咲いて夕べにはしぼんでしまうので、その華麗な花の美しさも一日のものでしかないということから、栄華のはかないことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】「邯鄲ノ夢」人間の栄辱死生は畢竟夢の如しとの意。──【諺語大辞典】 ともに中国古典に由来する、人間の栄華のはかなさを例えた文句。本来「槿花一日の栄」、「~一炊の夢」と表記すべきか。(講談・木村長門守「噫太閤殿下の御功業も、槿花一朝の榮、廬生が邯鄲一睡の夢と相成り申したな」)

【金枝玉葉きんしぎょくよう)天子の一門、天子の一族。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・安政三組盃「宮は雲居はるかにまします、金枝玉葉の御身」)講談:赤穂義士本伝

近所合壁】(きんじょがっぺき)近所や壁隣。隣近所。──【江戸語の辞典】(落語・茶釜の喧嘩:「お前の家位い不断に夫婦喧嘩をする家はないね、近所合壁はどの位に迷惑だか知れないよ」)講談:赤穂四十七士

【巾着切り】きんちゃくきり)すり。掏摸。──【江戸語の辞典】(講談・小金井小次郎「何時まで巾着切りをして居たつて仕方がねえ」)講談:安政三組盃

【禽獣といえど道あって理なきにあらず】きんじゅうといえどみちあってりなきにあらず)(落語・塩原多助一代記「譬へにも、禽獣といへど道有つて理なきにあらずといふ事がございまして」)

【金打】きんちょう)約束を違えぬ証拠として、武士が刀の刃と刃または鍔と鍔などを打ち合わせ、あるいは小柄の刃で刀の刃を叩くこと。ちなみに女は鏡と鏡を打ち合わせる。──【江戸語の辞典】 浪曲台本「金比羅利生記」=「田宮坊太郎」には、「脇差の鯉口を切って小柄を取ってカチカチと金打」する場面がある。(落語・真景累ヶ淵「木刀を帯してきたから今日は金打が出來ませんが」)落語:高田の馬場、二段目、牡丹燈籠 講談:太閤記

【銀流し】ぎんながし)銅・真鍮等の銀めっき。──【江戸語の辞典】(講談・寛永三馬術「この頃は銀流しがずいぶんあるのだから」)

【金箔付き】きんぱくつき)紛れがないこと。定評があること。万人が認めること。──【江戸語の辞典】(講談・天保六花撰「金箔附の町人」)

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