【さぁ斬ってくれ、たてから斬るか、横から斬るか、斬って赤い血が出なけりゃお代はいらねえ西瓜野郎】(さあきってくれ、たてからきるか、よこからきるか、きってあかいちがでなけりゃおだいはいらねえすいかやろう) 諺ではない。(講談・安政三組盃「どこから斬る、頭から斬るか尻(けつ)から斬るか、斬って赤い血が出なけりゃァ銭はとらねえ」、大石東下り「おもしろい、さァ斬ってくれ。たてから斬るか横から斬るか、斬って赤くなければ代銭はいただきません、受合いの西瓜野郎だ」)
【さあ事だ馬の小便渡し船】(さあことだうまのしょうべんわたしぶね)川柳。(落語・巌流島「さァ事だ馬の小便渡舟……昔ァこの、今と違いまして、乗り物(もん)てえものがなんにもございませんな。で、この、渡舟てえものが、一つの交通機関」)
【細工は流々、仕上げを御覧じろ(見るがいい)】(さいくはりゅうりゅう、しあげをごろうじろ) 同じ仕事にも方法はいろいろあるのだから、やり方を途中でとやかくいわないで、出来上がりを見てから批評せよと自信の程を示すことば。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・大工調べ「『さすが大工は棟梁(細工は流々)』『調べ(仕上げ)をごろうじろ』」)
【サイコドンドン】(さいこどんどん)俗謡の題。「咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る」というような歌詞が有名。(落語・湯屋番「ここぞ一生懸命と義太夫を六段、河東節を四つうたって、長唄を七つやって、とうとうサイコドンドンでもって、中でしっくり返りました」)
【才子多病】(さいしたびょう)才子は才があるかわりにとかく体が弱く病気がちなものである。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・鈴木重八「ところが才子多病のたとえに洩れず、持病の癪に苦しむことが度々ございます」)
【棹は三年櫓は三月】(さおはさんねんろはみつき)棹をさして舟を操縦する技術はむずかしく、一人前になるには三年かかるが、櫓の漕ぎ方は三月でおぼえられる。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・船徳「竿は三年櫓は三月、なんてえことをいいますが、なかなかむずかしいもんで」)落語:お初徳兵衛
【逆さに振るって鼻血も出ない】(さかさにふるってはなぢもでない)「逆さに吊して振っても鼻血しか出ない」「逆様に振っても鼻血しか出ない」何一つ持っていないことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・掛取万歳「なにしろ銭が無えんだからしょうがねえ。なあ、逆さに振るって鼻血も出ねえン……」)落語:お化け長屋、睨み返し 講談:大岡政談お花友次郎、玉川上水の由来
【逆さまごと】(さかさまごと)「さかごと」ものの真理に反すること。また、順序が逆であること。特に、親が子の葬儀を営むこと。さかさごと。さかさまごと。──【広辞苑四版】(講談・寛永三馬術「逆さまごとを御覧に入れねばならず」)
【肴は気取、酌は髱】(さかなはきどり、しゃくはたぼ)酒のさかなには趣向をこらしたものがうれしく、酌をする者としては若い女性が是非欲しい。「髱」は日本髪の後方に張り出した部分。転じて、若い婦人の称。また、酌婦をいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・成田小僧 「オッと、酒は燗、肴は気どり、酌はタボか。ねえさんもタボのはしくれと……」)落語:夢金、札所の霊験、墓見 講談:大久保彦左衛門、小金井小次郎
【酒外れはせぬもの】(さかはずれはせぬもの)酒の仲間からはずれるのはよくない。少しでも飲んでみせるものだ。──【故事俗信ことわざ大辞典】「さけはずれは~」とも読む。(落語・三十石夢の通い路「べつに毒が入ってるわけやなし、酒はずれはせんもん、どうぞ」)
【坂は照る照る鈴鹿は曇る、間の土山雨が降る】(さかはてるてるすずかはくもる、あいのつちやまあめがふる) 「鈴鹿馬子唄」の一節。(重の井子別れ「坂は照る照る、鈴鹿はくもる あひの土山、雨が降る 唄ひ馴れた唄ではあるが、美い聲で、子供とは思はれぬ器用な節廻し」)講談:新門辰五郎
【盛らずば桜も人に折られまい桜の枝は桜なりけり】(さからずばさくらもひとにおられまいさくらのえだはさくらなりけり)(講談・大久保彦左衛門「どうだ坊主、昔の人は巧いことをいつた、盛らずば櫻も人に折られまい櫻の枝は櫻なりけり、過ぎたるは尚及ばざるが如し、出過ぎていかぬといふ戒めだ」)
【盛んなるところ美人あり】(さかんなるところびじんあり)(落語・札所の霊験「古の小町、唐土の楊貴妃といえども、これに優ることはあるまい。盛んなるところ美人ありというが……実にまったくである」)
【先々の時計になれや小商人】(さきざきのとけいになれやこあきうど)(落語・孝行糖「先々の時計になれや小商人……あの豆腐屋さんが来たら何時だとか、あの八百屋さんが来たら何どきだよ、と売り込むまでの辛抱は大変でございます」)講談:寛永御前試合、小間物屋四郎兵衛
【先の出ようで鬼にも蛇にもなるよ神にも仏にも】(さきのでようでおににもじゃにもなるよかみにもほとけにも)(講談・野狐三次「『先の出ようで鬼にも蛇にもなるよ神にも仏にも』って都々逸知らねえかい」)
【先へ行く子は知識】(さきへゆくこはちしき)(落語・泳ぎの医者「まことにハア丈夫だったが……。先へ行く子は知識だって、どうもハアしかたがねえもんだ」)
【先んずる時は人を制す、後るる時は人に制せらる】(さきんずるときはひとをせいす、おくるるときはひとにせいせらる) 「先んずれば人を制す」他人よりも先に事を行なえば、有利な立場に立つことができる。先手を取れば相手を制圧することができる。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・忠僕直助「講釈師が言うじゃァねえか、先んずる時は人を制す、早くいってあやまった方がいいよ」)落語:ちきり伊勢屋、船徳、うそつき弥次郎 講談:清水次郎長、木村長門守、寛永三馬術、太閤記、三家三勇士、夕立勘五郎、山中鹿之助、加賀騒動、重の井子別れ、小金井小次郎
【さくい】(さくい)淡泊である。あっさりしている。気軽である。──【江戸語の辞典】 「気がさくい」のを「気さく」という。(落語・宮戸川「サクイ御方ゆえ乗せてやろうと早速お聞き済み下され有難う存じます」)
【桜咲く桜お山にお酒が無ければ只の山】(さくらさくさくらおやまにおささがなければただのやま)(落語・花見の仇討「桜咲く桜お山にお酒が無ければ只の山 と云ふ譬への如くで、御酒を召し上がつて見ますと花も宜い者で御座います」)落語:花見酒、あたま山
【桜は若きを以て良しとなし、梅は老いたるを以て尊しとする】(さくらはわかきをもってよしとなし、うめはおいたるをもってたっとしとする)(講談・大久保彦左衛門「櫻は若きを以て良しとなし、梅は老いたるを以て尊しとする、其の匂馥郁として鼻を劈くばかり」)
【酒一杯にして人酒を飲み、酒二杯にして酒酒を飲み、酒三杯にして酒人を飲む】(さけいっぱいにしてひとさけをのみ、さけにはいにしてさけさけをのみ、さけさんばいにしてさけひとをのむ)「一盃ハ人酒ヲ飲ミニ盃ハ酒酒ヲ飲ミ三盃ハ酒人ヲ飲ム」[安斎随筆]二十三、利休居士酒盃の銘、一盃人飲酒、ニ盃酒飲酒、三盃酒飲人。──【諺語大辞典】(落語・禁酒番屋「ただ飲むのはよろしいが、酒に飲まれるというので、酒三杯にして酒人を飲むとかいいますが」)落語:子別れ 講談:小山田庄左衛門
【酒がお客かお客が酒か酒がお客を連れてくる】(さけがおきゃくかおきゃくがさけかさけがおきゃくをつれてくる)(落語・五人廻し「一ッぱいのむと、ふらふらと出かけるのがあの遊里(さと)ですなァ。だから、酒というものが、客を呼んで くるといいますな。酒がお客かお客が酒か酒がお客を連れてくる……」)
【酒でしのがす苦の世界】(さけでしのがすくのせかい)(落語・居残り佐平次「『酒でしのがす苦の世界』てえことがあるからねェ、またひとつ、こんなことをしたいねェ」)
【酒なくてなんのおのれが桜かな】(さけなくてなんのおのれがさくらかな)酒のない花見など、どうして花見であるものか。酒がなければ花見をしていてもいっこうに面白くない。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・六尺棒「酒なくて何の己れが河童の屁とか申しますが、実にどうも食ひ過ぎて花を御覧になるのと、御酒を召上がつて御覧なさるのとは、お花見の心持が違ふだらうと私は思ひます」)落語:芝浜、花見酒 講談:小野寺十内、赤穂四十七士伝
【酒には十癖あり、一に寝、二機嫌、三笑い、四勘定、五管巻き、六後引き、七助平、八泣き、九盗み、十喧嘩】(さけにはじゅっぺきあり、いちにね、にきげん、さんわらい、しかんじょう、ごくだまき、ろくあとひき、しちすけべい、はちなき、くぬすみ、とうけんか)(講談・笹川繁蔵「酒には十癖と申して、一寝、二機嫌、三笑い、四勘定、五管巻き、六後引き、七助平、八泣き、九盗み、十喧嘩――となるから、くれぐれも三笑いの辺でとどめまして、深酒は絶対慎みたいものであります」)
【酒のない国に行きたい二日酔いまた三日目に帰りたくなる】(さけのないくににいきたいふつかよいまたみっかめにかえりたくなる)(落語・備前徳利「されば御酒家を詠んだ狂歌の中に『酒のない国に行きたい二日酔、又三日目に帰りたくなる』などと云うのがあります」)落語:居酒屋、花見酒 講談:無筆の出世
【酒飲みというものは騙して寝かせるより外仕方ない】(さけのみというものはだましてねかせるよりほかしかたがない)(講談・幡随院長兵衛「今夜の處は我慢をしてくれるやうに――酒飲みといふものは欺して寝かすより外に仕方がねへ」)
【酒呑みに肴はいらぬ】(さけのみにさかなはいらぬ)(講談・伊達誠忠録「さうか、はて困つたな。酒飲みに肴はいらぬといふが、さて何にもないと思ふと淋しいな」)
【酒飲みは奴豆腐にさも似たりはじめ四角であとはぐずぐず】(さけのみはやっこどうふにさもにたりはじめしかくであとはぐずぐず)(落語・居酒屋「酒飲みは奴豆腐にさも似たりはじめ四角であとはぐずぐず……うまいことを申しました」)落語:一人酒盛
【酒は過ちの基】(さけはあやまちのもと)(落語・子別れ「酒は過ちの基とか申しまして、御酒というものは、先ず中から下の人間(ひと)が脳(あたま)が薄ッぺらな故(せい)か酒の染み方が早いようで」)
【酒は命をけずる鉋】(さけはいのちをけずるかんな)(落語・堀川「また命を削るかんなやともいいまして、はたしてどちらがほんとうか、わかりかねておりますのやが」)落語:備前徳利、子別れ
【酒は憂いをはらう玉箒】(さけはうれいをはらうたまははき)(「箒」はほうきの意。「玉」は美称の接頭語)酒を賛美 することば。酒は心配事や悩み事を払い去ってくれるすばらしい箒のようなものだ。中国の詩人、蘇軾(東坡)の詩から出たことば。──【故事俗信ことわざ大 辞典】(落語・縁結び浮名の恋風「上戸は上戸で、自分勝手の理窟を附けまして、酒は憂いを払う玉箒」=清正公酒屋)落語:芝浜、備前徳利、花見酒、子別れ
【酒は買うべし、小言は言うべし】(さけはかうべし、こごとはいうべし) 「小言は言うべし、酒は買うべし」に同じ。(落語・味噌蔵「『酒は買うべし、小言は言うべし』だよ、うん。ふだんみんな猫をかぶってるけど、いける口だろ」)
【酒図りなし乱に及ばず】(さけはかりなしらんにおよばず)酒は酔うを以て、節度として乱に及ぶべからず。──【諺語大辞典】 「量りなし」とも書き、「酒は量なし」とも読む。「論語」より。乱れない程度に飲むべきであるという戒め。(講談・猿飛佐助「酒図りなし乱に及ばず、とは聖人の誡め」)
【酒は燗、魚は気取り、酌は髱】(さけはかん、さかなはきどりしゃくはたぼ) 前出の「肴は気取り、酌は髱」に、「酒にはお燗をつけるべきだ」という条件を付与した諺。(落語・赤垣源蔵「其方酌いたして呉れ、酒は燗、肴は気取り、酌は美婦(たぼ)。貴様は美婦の切れつ端だ」)落語:成田小僧、首提灯、佛馬、三人旅、墓見
【酒は気狂水、酔漢は酒狂人】(さけはきちがいみず、よっぱらいはさけきちがい)「酒は気違い水」酒は人の気を狂わせる飲み物である。酒に飲みふけることを戒めたことば。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・庖丁「気違い水なんといって、嫌いな方はたいへんいやがりますけれども」)落語:らくだ、芝浜、備前徳利、首提灯、庖丁、縁結び浮名の恋風=清正公酒屋 講談:清水次郎長
【酒は天の美禄】(さけはてんのびろく)酒は天からのすばらしい賜物である。酒をほめたたえていう。このことばから「美禄」は酒の異称となった。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・芝浜「百薬の長だの、天の美録だの、憂を払う玉箒などというのは皆其の程に召上って居る方のいうことで」)落語:親子酒 講談:水戸黄門、伊達誠忠録、笹川繁蔵、横川勘平、寛永三馬術
【酒は飲むべし、飲むべからず】(さけはのむべし、のむべからず)酒は飲んでもよいが、程度をこえて飲んではならない。──【故事俗信ことわざ大辞典】 後半は「飲まるべからず」とも。(落語・饂飩屋「可飲不可飲、何方して宜いか分りませんが、つまり程といふ所が宜いのでございませう」)落語:一人酒盛、禁酒番屋、清正公酒屋、備前徳利、親子酒、かはりめ 講談:矢田五郎右衛門、小山田庄左衛門、赤垣源蔵のかたみ
【酒は飲んでも飲まいでも(、勤むるところはきっと勤むる武蔵守)】(さけはのんでものまいでも)忠臣蔵の師直の台詞。──【諺語大辞典】(落語・大山詣り「大丈夫大丈夫。酒は呑んでも飲まいでもだ……ヲツト浮雲い」)講談:笹野名槍伝、左甚五郎
【酒は百薬の長、百毒の長】(さけはひゃくやくのちょう、ひゃくどくのちょう) 「~なり、多く喰らえば命を断つ」と続く。「百薬の長」酒は適度に飲むならば、どんな薬よりも体に一番よい。「百毒の長」体に害毒となるものの中で、酒はその最たるものである。酒は万病のもとである。 ──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・ちきり伊勢屋「ウン、うめえもんだ。“酒は百薬の長”てえやがったねえ、なァ」)落語:親子酒、ちきり伊勢屋、芝浜、備前徳利、花見酒、六尺棒、市助酒、饂飩屋、らくだ 講談:横川勘平、伊達誠忠録、両越大評定、仏の作蔵、赤穂四十七士伝
【酒は礼に始まって乱に終わる】(さけはれいにはじまってらんにおわる)「酒極まって乱となる、楽しみ極まって悲しみとなる」儀礼的に節度正しく始まった酒宴も極点に達すると、酔狂のあげく酒席も乱れたものになる。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・柳生三代「酒は禮に始まつて亂に終ると申しますが、此の連中は亂に始まつたのだから堪らない」)講談:幡随院長兵衛、加賀騒動、出世の盃
【酒はわざわいの種】(さけはわざわいのたね)(講談・小山田庄左衛門「あゝとんでもないことを致した。酒はわざわいの種じゃ。つまりわしが悪いのじゃ。とんでもないことをした」)
【雑魚の魚交り】(ざこのととまじり)小魚をザコという。微弱なるものの、強大なるものの中に列するに喩う。──【諺語大辞典】(講談・清水次郎長「どういたしまして、ろくな遊びもできません、ほンの雑魚の魚交りというだけで」)講談:倉橋伝助、塚原ト伝、寛永御前試合、玉菊燈籠
【雑魚ももぞうも一緒に】(ざこももぞうもいっしょに)「雑魚ももうぞも」(「もうぞも」は「もうぞ う」でくだらないこと、おろか者の意)何もかもまぜこぜにして。「猫も杓子も」。──【故事俗信ことわざ大辞典】 もぞう(無象と書く。「盲象」=もうぞ うと書く場合も)はつまらぬ人々のたとえ。(落語・宿屋の仇討=宿屋仇「むじな屋と申す宿屋にとまりしところ、なにはさて雑魚も、もぞうもひとつに寝かせおき」)
【ササホーサ】(ささほーさ)さんざん。めちゃめちゃ。むちゃくちゃ。──【江戸語の辞典】(講談・祐天吉松「三拍子揃つた道楽に屋敷も何もサゝホーサ」)落語:旦那の羽織
【さしったり】(さしったり)「然知ったり」。かねて待ちかまえていた時に発する声。こころえた。おっと合点だ。ま た、心得ていたのに油断して失敗した時に発する声。ええしまった。──【広辞苑四版】 立川文庫版「宮本武蔵」には、「さ退ったり」という表記がある。 (講談・寛永御前試合「羽根を鳴らして飛來る、さしつたりと寶蔵院例の槍にて發止と打てば矢は二つになつて左に飛ぶ」)
【座して食らえば泰山も空し】(ざしてくらえばたいざんもむなし)働かずに暮らしていれば、山のような財産もやがて尽きてしまう。座食すれば山も空し。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・怪談市川堤「だんだん、だんだん座して喰えば山をも虚しで、こいつ何もかも金はなくなる。道具に手がつく」)落語:ちきり伊勢屋、富久、怪談市川堤、乳房榎 講談:矢田五郎右衛門、寛永三馬術、大石内蔵助、間十次郎、天野屋利兵、和久半太夫、大塩瓢箪屋裁き、鼠小僧次郎吉、幡随院長兵衛、越後伝吉、赤穂四十七士伝、藪原検校、大岡政談お花友次郎
【指して行方は白雲の、山はた山をうち越えて】(、寄辺渚の捨て小舟、取りつく島もなき身 )(さしてゆくえはしらくもの、やまはたやまをうちこえて)(講談・寛永三馬術「大勢の門弟に見送られました筑紫市兵衛親子は、指して行方は白雲の山また山を打越えて、寄邊渚の捨小舟、取付く島も無き身となりましたが」)講談:笹野名槍伝
【ざっかけない】(ざっかけない)「ざっかけなし」ざっかけない者。ざつな者、がさつな者。(講談・祐天吉松「さうよ、何も左様然らばと、改まつて口を利くのが坊主といふ譯でもねえ、ザツカケねえ口を利いたつて坊主は坊主だ」)落語:山崎屋
【悟りなば出家になるな魚食え地獄へ行って鬼に負けるな】(さとりなばしゅっけになるなさかなくえじごくへいっておににまけるな) 「悟りなば坊主になるな魚食え地獄へ落ちて鬼に負けるな」とも。一休禅師(一三九四~一四八一)の作った道歌であるという。(講談・田宮坊太郎「イヤそれ は表向き、紫野大徳寺の一休禪師の悟に申したではないか、悟りなば出家になるな肴食へ、地獄へ落ちて鬼に負けるな」)落語:万金丹
【さぶるこ】(さぶるこ)うかれめ。遊女。さぶるおとめ。──【広辞苑四版】(落語・紺屋高尾「これがまァ、そもそもの始まりだなんと申しますが、古くはさぶるこなんという言葉もありまして、さぶるこ、『万葉集』にその歌が出ておりますが」)
【寒いところで何よりのご馳走は火】(さむいところでなによりのごちそうはひ)(講談・水戸黄門「この雪で定めしお寒いことでございませう。寒い時には火が何よりの馳走」)落語:鰍沢 講談:寛永御前試合
【寒からぬほどに見ておけ嶺の雪】(さむからぬほどにみておけみねのゆき)(落語・五人廻し「『寒からぬ程に見ておけ峯の雪』……吉田の兼好も申されたものでがしょ?」)講談:関東七人男
【侍は孝を捨てても忠を立てねばならぬ】(さむらいはこうをすててもちゅうをたてねばならぬ)(講談・磯貝十郎左衛門「よう申した、侍は孝を捨てても忠を立てねばなりません。あとのことには心を残さず、一日もはやく赤穂にまいり、御城代大石殿のお差図にしたがい、あっぱれ武士の道を立ててくだされ」)
【侍は人の鑑】(さむらいはひとのかがみ)(落語・井戸の茶碗「成程、お武士様といふものは人の鑑とか云ひますが、御潔白のお心持恐入りました」)
【侍も弔いもあるか】(さむらいもとむらいもあるか)(落語・たがや「何を言やがんでぃ。さむらいもとむらいもあるか。なぁ、てめえたち大手を振って江戸の町歩けねえんだ」)
【さめての上のご分別】(さめてのうえのごふんべつ)編者注:忠臣蔵の平右衛門の台詞より。(落語・子別れ「なにしろおれは酔っている。このとおりだ。酔いがさめてからのことよ。さめての上のご分別。いずれご挨拶しよう」)落語:船徳、鰻の幇間
【猿の尾は短し、虎の尾は長し】(さるのおはみじかし、とらのおはながし)(講談・徳川天一坊「『猿の尾は短し虎の尾は長し』といふ白(せりふ)がありますが、秀吉公は猿に似てゐたから、倅の代になつて滅びた」)
【去る者は追わず】(さるものはおわず)「去ル者ハ追ワズ、来ル者ハ拒マズ」去るも来るも人の自由にまかすをいう。──【諺語大辞典】(講談・赤穂義士本伝「けれども内蔵助は去る者は追はずといふ態度」)
【去る者は日々にうとし】(さるものはひびにうとし)親しかった者でも、離れて顔を合わせないようになると、しだいに間柄が疎遠になっていく。また、死んだ人は月日がたつにつれて、だんだんと忘れられてゆく。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・藪入り「それが『去るものは日々にうとし』、十日が二十日、三十日と……お店の用事も忙しくなる。自分の家のことは、とんと忘れて、思い出す日が少なくなります」)落語:藪入り、王子の幇間 講談:天保六歌撰、由井正雪、岩見重太郎、夕立勘五郎、祐天吉松、安中草三郎、関東七人男、真柄のお秀
【さわらぬ神にたたりなし】(さわらぬかみにたたりなし)物事に関係さえしなければ、害を受けることはないというたとえ。(講談・岩見重太郎「平素人の長ずるを嫉み、己れのいたらぬを顧みざる小人、さわらぬ神に祟りなし、勝ちを譲っておくが無事である」)《い》講談:笹野名槍伝、由井正雪、慶安太平記、加賀騒動、
【さわらば(触れなば)落ちん風情】(さわらば・ふれなばおちんふぜい)女の靡きやすげなる形容。──【諺語大辞典】「さわらば散らん」(講談・安政三組盃)ともいうか。(講談・幡随院長兵衛「長兵衛の姿を見ると、情のこもつた眼で見るのが、さはらば落ちん風情、所が長兵衛には何の感じもない」)
【三月比目魚(ひらみ)は犬も食わぬ】(さんがつひらみはいぬもくわぬ)陰暦三月になると、ひらめの味がひどく落ちるところからいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】編者注:「三月鯛は犬も食わぬ」とも。(講談・関東七人男「徳利が七つ八つ行列して、蛸の三杯酢に犬も食わぬという三月比目魚の刺身」)
【三家の家来は陪臣にして陪臣にあらず】(さんけのけらいはばいしんにしてばいしんにあらず)(講談・千馬三郎兵衛「何の先方は尾州家の御家來、三家の家來は陪臣にして陪臣にあらずといつて、御直參も同様だ」)講談:由井正雪、慶安太平記、水戸西山公
【三軒長屋の間に住むと魔がさす】(さんげんながやのあいだにすむとまがさす)「三軒長屋の真ん中に住むと病人が絶えぬ」とも。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・三軒長屋「“三軒長屋の間に住むと魔がさす”なんてえことをいいますが、別に魔がさす訳じゃァございません。なにかにつけて不都合があるようですな」)
【三公の位に至る】(さんこうのくらいにいたる)「三公」太政官の最高職すなわち太政大臣、左大臣、右大臣。または左大臣、右大臣、内大臣の総称。──【広辞苑四版】(講談・徳川天一坊「お前の相にはうまくすると三公の位に上がる」)
【三歳の翁、百歳の童子】(さんさいのおきな、ひゃくさいのどうじ)若くして智なるあり、老いて愚なるありをいう。──【諺語大辞典】 講談「心中奈良屋」で博徒・和田島太左衛門が清水次郎長を評していう言葉。(講談・清水次郎長「お前は年は若いが心の奥が深い、三歳の翁、百歳の童子といふのは此の事だらう」)講談:寛永御前試合
【三七、二十一日】(さんしち、にじゅういちにち)「三七日」二十一日。三週間。──【広辞苑四版】(落語・元犬「三ン七、二十一日のあいだ、八幡さまにはだしまいり」)講談:越後伝吉、水戸黄門
【三尺高い木の空で(横腹に風穴が開く時は)】(さんじゃくたかいきのそらで)「三尺高い処」はりつけのお仕置になること。土で三尺、木で三尺、六尺高い木の空──そうした高さのところに、。はりつけになる自分がしばりつけられる木が立てられていたという意味。──【明治東京風俗語事典】(落語・居残り佐平次「三尺高え木の空で、モシ此の横ッ腹へ風穴が開きます。お慈悲でございますから、余熱の覚めるまでモウ少しの間お匿まいなすつてお呉んなさいまし」)講談:水戸黄門、両越大評定
【三尺の槌をもって大地を打つは外れることもあるが……】(さんじゃくのつちをもって・だいちをうつははずれることもあるが)「打ツ槌ハハズルトモ」大地ヲ打ツ槌ハハヅルトモ何々ノ事ハハズレズという。──【諺語大辞典】(講談・清水次郎長「それなれば話をしよう。三尺の槌をもって大地を打つは外れることもあるが、私の言葉は万に一つも外れる気づかいはないから、そのつもりでいなさい」)落語:ちきり伊勢屋 講談:梁川庄八、寛永御前試合
【三尺の童子】(さんじゃくのどうじ)身のたけ三尺ほどの子供。すなわち、幼児。また、無知な者にたとえる。──【広辞苑四版】 「~も知らぬ者はない」といえば、非常に高名であるということ。「犬打つ童」などと同義。(講談・西郷南洲「果なくも城山一片の露と消えました明治維新の大豪傑こそ、三尺の童子も知らぬ者はない西郷南洲其の人で御座います」)
【三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして命を知る】(さんじゅうにしてたち、しじゅうにしてまどわず、ごじゅうにしてめいをしる)「論語」(為政編)より。「三十にして立つ」三十歳になり、自己の確固とした立場をもってゆるがず、自立する。「四十にして惑わず」四十歳になって、道理も明らかになり、人生の問題に惑うことがなくなった。「五十にして天命を知る」五十歳になってはじめて自分の人生についての天命、運命がどういうものであったかがわかる。──【故事俗信ことわざ大辞典】編者注:「而立」は三十歳、「不惑」は四十歳、「知命」は五十歳の異名となっている。(落語・万金丹「人は三十にして立つ、四十にして惑はず。失礼のことをいふやうだが、モウコレ四十男だな」)講談:水戸黄門
【三十六計逃げるに如かず】(さんじゅうろっけいにげるにしかず)臆病者の遁辞とす。──【諺語大辞典】 「~逃げるが専一」とも。(講談・野狐三次「三十六計逃げるに如かず。権現さまといやァその逃げの手の元祖だ」)講談:水戸黄門、幡随院長兵衛、大久保彦左衛門、塚原ト伝、鈴木重八、西郷南洲、寛永御前試合
【三上戸】(さんじょうご)(落語・ずっこけ「酒には、必ず癖というものがあります。上戸(じょうご)と言われるものですが、特に多いのが三上戸。怒り上戸、泣き上戸はいけませんが、笑い上戸ってのは陽気でいいですね」)
【山椒は小粒でもぴりりと辛い】(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)からだは小さくても、気性や才能がひじょうに鋭くすぐれていることのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・野崎詣り「サン、山椒はナ、コラ、ヒリリと辛いわイ、阿呆ンだら」)落語:素人相撲、ゆめ 講談:宮本武蔵、誰が袖音吉
【三寸不爛の舌】(さんずんふらんのした)滑らかでよく回る舌。雄弁。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・安政三組盃「彼はことば巧みに、三寸不爛の舌頭に嫉刃を合わせて大蔵のことを讒謗した」)落語:政談月の鏡 講談:伊賀の水月、慶安太平記
【三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたい】(さんぜんせかいのからすをころしぬしとあさねがしてみたい)(落語・三枚起請「『世界の烏をみんな殺すんだよゥ』『烏を殺して、どうするんだい』『朝寝がしたい』」)
【三千の罪、不孝より大なるはなし】(さんぜんのつみ、ふこうよりだいなるはなし)(講談・大久保彦左衛門「イヤ實に美しい女でも心の恐ろしい奴がある、三千の罪、不孝より大なるはなし」)講談:柳生二蓋笠
【三度の神は正直】(さんどのかみはしょうじき)三度占って、三度とも同じ結果)が出たら、それは確かなものであるということ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・鎌倉星月夜「ささ、もう一通お書きあそばせ。三度の神は正直ということもございます」)
【ざんない】(ざんない)「慙無い」。見るに忍びない。無慙の意から、ひいては、見苦しい意に用いる。──【大阪ことば事典】(落語・仔猫「見た目は様ないけど、ふたをとってみたら中は思いもよらんご馳走や」)
【三人旅は一人乞食】(さんにんたびはひとりこじき)旅をはじめとして、三人で一緒にひとつ事をしようとすると、その内一人は仲間はずれにされやすい。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・三人旅「『三人旅ひとり乞食』なんという。旅というものはやはり丁目がいいんだそうで……。」)落語:長者番付、朝這い
【三人寄れば満座】(さんにんよればまんざ)「三人寄れば公界(くがい)」(人が三人集まればそこはもう公的な場所となるの意から)三人いる場所で言ったりしたりした事を秘密にしておくのは難しく、漏れやすいものであるということ。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「三人寄れば人中」(「毛吹草」にもある)とも。(講談・野狐三次:「アゝ三人寄れば満座という、三人どころか数多の見物の中で鳶人足などに、如何に贔屓になったとはいえ、頭を打れるたア残念だ」)
【三人寄れば文殊の智慧】(さんにんよればもんじゅのちえ)(「文殊」は知恵をつかさどる菩薩の名)凡人でも三人集まって相談すれば、なんとかいい知恵が浮かぶものだということ。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「毛吹草」にもある。(講談・音羽丹七「其やアマア神様佛様にお願え申すも宜いが、どうだね三人寄れば文殊の智慧とやら」)《い》講談:伊賀の水月、相馬大作、小猿七之助
【三年添って子なきを去る】(さんねんそってこなきをさる)「七去」(かつて女房を離縁する規準と いわれた、「父母に順ならず」「子なき」「淫」「炉」〔嫉妬深いこと〕「悪疾」「多言」「竊盗」)のひとつ。(落語・安産「三年添つて子無きは去るべしと、七去の一番の戒めになつて居りました」)落語:小言幸兵衛、搗屋幸兵衛、安産 講談:二度目の清書
【産の入用は藁の上から三貫】(さんのいりようはわらのうえからさんがん)編者注:「薦の上から三貫」に同じ。(講談・水戸黄門「困つたな、産の入用は藁の上から三貫といふ比喩にいふ位、先に立つのは錢金だ」)
【三拝九拝】(さんぱいきゅうはい)三拝の礼と九拝の礼。転じて、(人に物事を頼んで)何度もおじぎをすること。──【広辞苑四版】(講談・伊賀の水月「主人みづから三拝九拝をいたして持って参るか」)
【三伏】(さんぷく)夏の極暑の期間。夏至の後第三の庚の日を「初伏」、第四の庚の日を「中伏」、立秋後の第一庚の日を「末伏」という。──【広辞苑四版】(講談・由井正雪「何にいたせ夏雨のないことは非常な苦しみ。所謂三伏の炎暑」)講談:田宮坊太郎