増補・話芸きまり文句辞典

落語・講談によく出ることば(改装中)

【喪家の犬】そうかのいぬ)「累々トシテ喪家ノ狗ノ如シ」累々は志を得ざる貌、死人ありし家は犬に飲 食を与えざるより、悄然として力なきに喩う。──【諺語大辞典】、喪中の家の飼い犬。不幸があった家の人は、その悲しみのあまり、犬の世話をすることも忘 れるのでやせおとえる。一説に、宿なしの犬。見る影もなくやつれて元気のない人をたとえていう。喪狗。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・寛永御前試 合「そこで家臣の面々は喪家の犬のようにいずれも四散してしまいました」)

【宋襄の仁】そうじょうのじん)無用の仁義だてをいう。──【諺語大辞典】編者注:宋襄婦人の仁ともいう。(講談・太閤記「此場に臨んで仁義も何もござらぬ。無益の仁義立てはそれこそ宋襄の仁といふもの」)

【雑用】ぞうよう)種々のこまごました費用。諸雑費。──【江戸語の辞典】 「平凡な」「ありきたりな」の意もあるか。(落語・真景累ヶ淵「てめえみてえな面はな、江戸へ行きゃァ、雑用でどこへでもころがっているんだ」)

【総領の甚六】そうりょうのじんろく)長子に愚物多きをいう。「甚六」愚にして大様なる者をいう。──【諺語大辞典】 「惣領は尺八を吹く面に出来」(落語・石返し)という川柳もある。本来「順禄」 (じゅんろく)=親の財産を長男から順に継ぐことをいう、とも。(落語・福禄寿「ェェ“惣領の甚六”なんてことォ言ってまして、どうも惣領ァ知恵が足りなくっていけないなんてェことォ申します」)《い》落語:遠山政談

【ぞくろをかう】ぞくろをかう)【意味】「そくろをかう」、「ソクラヲカウ」人を使嗾する(ケシカケル)こと。──【諺語大辞典】 「嘱賂(または「惣鞍」)を飼う」と表記する。(講談・関東七人男「汝(うぬ)はよくも幸右衛門にぞくろをかって、俺たち二人を沼田へおくったな」)

【底を入れる】そこをいれる)【意味】酒を飲む。飯を食う。──【江戸語の辞典】(落語・能狂言「何かまァ、そこを入れようじゃねえか」)落語:付き馬 講談:汐留の蜆売り

【祖師は日蓮に奪われ、大師は弘法に奪われ、名奉行は大岡に奪われ、義士は四十七士に奪わる】そしはにちれんにうばわれ、だいしはこうぼうにうばわれ、めいぶぎょうはおおおかにうばわれ、ぎしはしじゅうしちしにうばわる) (落語・大師の杵「又祖師は日蓮に奪われ、大師は弘法に奪わるなどゝいう事を申しまして」)落語:山岡角兵衛、佐々木政談 講談:水戸黄門、左甚五郎

【俎上の鯉】そじょうのこい)「俎上の魚」まないたの上の魚。相手のなすがままになるよりほかない運命、死を待つよりほかに方法のないもの、運命の尽きたもののたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・寛永三馬術俎上の鯉、すきもきらいもふざけたことを吐かしやァがるな」)

【育つほど土に手をつく柳かな】そだつほどつちにてをつくやなぎかな)(講談・水戸黄門「『育つほど土に手を突く柳かな』といふ比喩(たとへ)もあります」)

【卒爾ながら】そつじながら)「卒爾」にわかなさま。軽率なさま。──【広辞苑四版】(落語・うそつき弥次郎「卒爾ながら火をひとつお貸しくだされ」)

【袖振りあうも他生の縁】そでふりあうもたしょうのえん) (「他生」はこの世意以外の世。前世)「〜躓く石も縁の端」と続く。「振り合う」は互いに触る、または振り合うということ。道を行く時、見知らぬ人と袖が 触れ合う程度のことも、前世からの因縁によるという意。袖すり合うも多生の縁。袖の振り合わせも多生の縁。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「毛吹草」に 「袖のふりあはせも多生の縁」とある。(講談・男くらべ「よろしう御座います、袖すり合ふも他生の縁、どうぞこれをお持ち下さい」)《い》落語:たらちね、王子の狐、高砂や、死神、田能久、左甚五郎、樊カイ、饂飩屋 講談:水戸黄門、笹野名槍伝、男くらべ、慶安太平記、安中草三郎、藪原検校、神崎の詫証文

【備えあれば憂いなし】そなえあればうれいなし)平生からいざという時の準備を怠らないでいれば、万一の事態が起こっても、少しの心配もない。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・義士討ち入り「偉い! 偉いねェ。備えあれば憂いなしだ」)

【其の木に棲んで其の木を枯らす】そのきにすんでそのきをからす) 「獅子身中の虫」のことか。(講談・加賀騒動「かの大槻傳藏は其の木に棲んでその木を枯らす佞奸の曲者」)

【其主あって其他は知らぬ】そのしゅうあってそのたはしらぬ)(講談・太閤記「此頃の武士の習、其の主あつて其他は知らぬ、善にもあれ惡にもあれ、自分の主と憑んでゐる者の爲に盡せば、それで武士の本分は終つてゐるのであります」)

【その手は桑名の焼蛤】そのてはくわなのやきはまぐり)「食わない」の「くわな」と焼蛤で有名な三重県の「桑名」を言いかけて、その手は食わない、その手にはのらないということをしゃれていったもの。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・天野屋利兵衛「その手は桑名の焼蛤、いつもそれでもつてやられるんだ」)落語:羽衣、孝行娘 講談:清水次郎長

【その人を見るにはその友を見よ】そのひとをみるにはそのともをみよ)「其の子を知らざれば其の友を見よ」もしその人がどのような人物かわからない時には、その人の友人を見ればよくわかる。人は似た者同士集まるものだから、その性行は、交際している友人を見ればわかるのである。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・一文惜しみ「うんうん、いい事を言ってくれたな。あァ、『その人を見るにはその友を見よ』という事がある。友達はいいのとつき合わなくちゃいけねえ」=五貫裁き

【其の元乱れて而して其の末治まらず】そのもとみだれてしかしてそのすえおさまらず)(講談・夕立勘五郎「内の親分は堅えから其本亂れて而うして末納まらず、御用を持つてるものがそんな事をして、捕える手前が先に立つてやるやうぢやア仕方がねえと、親分に俺れが捕まる」)講談:鎌倉星月夜

【それつらつらおもんみるに】それつらつらおもんみるに)(落語・万金丹「それつらつら思んみれば、汝元来枯木のごとく、もっともヒョットコによく似たり」)

【それにつけても金のほしさよ】それにつけてもかねのほしさよ)如何なる上の句にも連続すべき句なりという。山崎宗鑑の語。──【諺語大辞典】(講談・南部坂雪の別れ「たれやらが申したことに、いかなる和歌の難題も、下にそれにつけても金の欲しさよとつけると、一首の歌をなすと申すが、それに相違ない」)

【ぞろっかぞろっか】ぞろっかぞろっか)(講談・名人小団次「芝居がはねますと、大勢のお客様がぞろっかぞろっかと表へ出る」)講談:五貫裁き、神崎の詫証文

【ぞろッペェ】ぞろっぺぇ)(働く時、長い着物をぞろりと着流して端折らぬ者の擬人名語ぞろ兵衛の促訛)だらしのないこと。しまりのないこと。大ざっぱなさま。粗略なさま。またその人。──【江戸語の辞典】一方、「候(そろ)べくの男」という語もある。手紙に用いられ た「候べく候」という語をなぐり書きにしたところから、いいかげんな男、やりっぱなしの男。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・うそつき弥次郎「其れ が貴所(あなた)の前だが田舎はぞろツペエだから其んなこともありますよ」)

【損して得を取れ】そんしてとくをとれ)「商人は損して得を取れ」とも。一時的には損をしても、それをもとに将来の大きな利益を考える。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・壺算「商人は損して得とれちゅうことがあるやないかいな」)《い》落語:位牌屋 講談:近松勘六相馬大作、明智三羽烏

【損料物そんりょうもの)「損料」衣服・器物などを借りて、その損ずる代償として支払う金銭。借用料。借料。(落語・お直し「むこうへ行って話をして、損料物を借りて帰ってきた」)講談:荒川十太夫

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