増補・話芸きまり文句辞典

落語・講談によく出ることば(改装中)

【口返答(つう)を返す】つうをかえす)「唾(つ)を返す」とも表記。目上の者に逆って言い返す。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・心眼「第一お前さんに口返答を返したことがないてえじゃァないか」)

杖とも柱とも】(つえともはしらとも)非常に頼りにすることのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・伊賀の水月「モー但馬守が杖とも柱とも思召すのは、三男の又十郎殿ただお一人」)

【杖の下から回す子はかわいい】つえのしたからまわすこはかわいい)「杖の下から回る子」打とうとして振り上げる杖の下からすがってくるような子は、可愛くて打つに打てない。すがってくるものには残酷なしうちはできないというたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・堀川「あゝそれは……杖の下からまわす子はかわいい……や」)

【杖の下に入る犬は打てぬ】つえのしたにはいるいぬはうてぬ)「杖の下から回す子は……」に同じ。(講談・野狐三次「何は兎もあれ、杖の下に入る犬は打てぬの譬え、助けてくれと頼まれた以上は、貴様らの手に渡す訳にはならぬ」)講談:祐天吉松

【使い早間】(つかいはやま)方方を走りまわって早く使いを果たすこと。また、その人。──【広辞苑四版】(落語・牡丹燈籠「わっちはなお萩原様の家来同様に畑を鋤ったり庭を掃いたり、使い早間もして」) 浪曲:正宗孝子伝

【柄に手をかければ元の柳かな】つかにてをかければもとのやなぎかな)(落語・反魂香「『柄に手を掛れば元の柳かな』『幽霊の正体見たり枯尾花』などといいまして、有るものかないものか演者(わたくし)には分りません」)

柄も通れと】(つかもとおれと)(講談・関東七人男「グイと手もとへ引き寄せ、柄も通れと胸元をズバリ」)

【突き当たって損なのは無法者と肥桶(こえたご)】(つきあたってそんなのはむほうものとこえたご)(講談・幡随院長兵衛「突當つて損なのは、無法者と肥桶だと申しますが、先づそんなものでございませうか」)

【月が甍から甍へ入る大江戸】つきがいらかからいらかへはいるおおえど)(落語・首提灯「手前どもの故郷とちがいまして、月が甍から甍へ入るという大江戸のこと」)

【月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月十五夜の月】つきづきにつきみるつきはおおけれどつきみるつきはこのつきのつき) 中秋の名月を讃えた歌。「月」が八回出てくるので、陰暦八月十五夜を意味する。(講談・朝顔日記「日は既に暮れて、夜の情景は又一段。月々に月見る月は多けれど月見る月は此月の月」)講談:名月若松城

【月に風情の待乳山つきにふぜいのまつちやま)(落語・船徳月に風情の待乳山、帆かけた船が見ゆるぞえ……あれをやるとお前さんはよほど船をこぐのがうまいってほめられやした」)落語:木乃伊取り

【月に叢雲、花に風つきにむらくも、はなにかぜ) 月が出ると幾重にも群がった雲がおおいかくし、花が咲くと風が散らすように、好事にはとかく故障が起こりやすいこと、浮世のままならぬことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・全快「処が月に叢雲花に風、国に盗賊家には鼠と申します比喩があります通りで」=死神)《い》落語:なめる、全快 講談:寛永三馬術、猿飛佐助、相馬大作水戸黄門〜出世の高松、柳沢昇進録、西郷南洲

【月日に関守なく】つきひにせきもりなく)月日の進行を止める関所番はいない。月日が少しも滞ることなく経過してゆくことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】「流れる月日に~」「流れる歳月に~」「過ぎゆく駒に~」とも。(講談・寺井玄渓「月日に関守なく、倅の玄達もだんだん成人いたし、この頃では父に代って、病家まわりが出来るようになりました」)落語:子別れ、吉野狐、宮戸川、牡丹燈籠 講談:近江聖人、紀伊国屋文左衛門、太閤記朝顔日記、野狐三次、岩見重太郎、越後伝吉、祐天吉松、重の井子別れ

月夜の晩ばかりと思ったら間違い】(つきよのばんばかりとおもったらまちがい)(講談・寛永三馬術「ヤイ与右衛門、月夜の晩ばかりだと思ったら間違いだぞ」)

【月夜に釜を抜く】つきよにかまをぬく)「月夜ニ釜ヲヌカレル(トラレル)」月の明かなる夜に釜を盗まるゝは、不注意至極なりとの意。(落語・三人旅「月夜に釜ァ抜くってえから、ただよ」)《い》

【佃育ちの白魚さえも、花に浮かれて隅田川】つくだそだちのしらうおさえも、はなにうかれてすみだがわ)(落語・芝浜「おふるい都々逸に『佃育ちの白魚さえも、花に浮かれて隅田川』なんてえのがありまして」)

【附焼刃は剥げやすい】つけやきばははげやすい)表面のみの装飾は、直に其本態をあらわす。──【諺語大辞典】(落語・阿弥陀池「真似というものはうまいこと いかんもんで。附焼刃ははげやすいということを言います」)落語:子ほめ、鮑のし、阿弥陀池、松竹梅、牛の嫁入、茗荷屋

【辻番は生きた親父の捨て所】つじばんはいきたおやじのすてどころ)【意味】辻番は江戸時代、武家屋敷町の辻々にあった番小屋の番人。多く年寄りのつとめとされていた。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・赤穂義士本伝「川柳に、――辻番は生きた親父の捨てどころ。というのがございますが、それは旗本が持ちよりでこしらえた辻番のことで」)

【土一升(に)金一升】つちいっしょうにかねいっしょう)土地の値段が極度に高いことをいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】「金一升に水一升」と講談「安兵衛道場破り」にある。実際に江戸の金座の地面にはおびただしい金糞が土に混じっており、この諺は単なる比喩表現ではない、という指摘が矢田挿雲の「江戸から東京へ」にある。(講談・越後伝吉「土一升金一升、其の繁榮とには、傳吉見るものに目を驚かし、聞くものに耳を驚かすといふ光景(ありさま)」落語:雪の瀬川、後の船徳 講談:安政三組盃、笹野名槍伝、鼠小僧次郎吉、越後伝吉

【包むとすれど現われにけり何とやら】つつむとすれどあらわれにけりなんとやら)(講談・安政三組盃「いや小染、包むとすれど現われにけり何とやらだ、どうもうまくねぇ」)

【勤め上がりは自堕落つとめあがりはじだらく)「勤め上がりの下紐は繻子の帯より解けやすい」(「勤め上がり」はもと芸娼妓であった者)芸娼妓上がりの女はかたぎになっても浮気しやすいということ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・鼠小僧次郎吉「勤め上がりは自堕落だから、愛想を尽かされねえようにしなせえ」)

【勤めする身も素人も恋に身分の隔てはない】つとめするみもしろうともこいにみぶんのへだてはない)「恋に上下の隔てなし」恋愛には身分の上下による区別はない。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・首ったけ「『勤めする身も素人も戀に上下の隔てない』と申して、勤めの身でも、戀を知らない事はないけれど、大体女郎衆に云わせると、自分の好いた人は儘にならない」)

【つまづく石も縁の端】つまずくいしもえんのはし)われを躓かしむる途上の石も、亦多少の縁ありてなり。──【諺語大辞典】(落語・高砂や「『袖すり会うも他生の縁』『つまずく石も縁の端』てェますから、われわれのお噺をかように聞いていただきます、これもまァなんかのご縁でございます」)

【妻は夫をいたわりつ】つまはおっとをいたわりつ)(落語・佃祭「女は男にかわいがってもらうよりほか楽しみがねえんですから、えゝ。妻は夫をいたわりつ、てえやつなン……えゝ。」)

【妻は目下より貰え】つまはめしたよりもらえ)(講談・大石瀬左衛門妻は目下より貰へといふ譬の通り、僅五十石頂戴しても、淺野家の家來。持參金に目が眩れて妻を迎へたと言はれては、同藩の者に對しても面目ない」)

【罪の疑わしきはこれを罰せず】つみのうたがわしきはこれをばっせず)「罪の疑わしきをば軽くし功の疑わしきをば重くす」罪状に疑わしい点のある場合は軽いほうの刑とし、功績に疑わしい点のある場合は重く行賞すべきであるということ。(講談・越後伝吉「罪の疑はしきは之れを寛うすべしといふ事がございますが」)講談:寛永三馬術安政三組盃、宮本武蔵、加賀騒動

【罪を憎みて人を憎まず】つみをにくみてひとをにくまず)「其の罪を憎んで其の人を憎まず」罪は憎むべきだが、其の罪を犯した人を憎むのはよくない。(落語・おかめ団子「おかめ能く決心をしてくれた。罪を憎んで人を憎まずといふ」)講談:梁川庄八、寺坂吉右衛門、夕立勘五郎 実録:大岡政談安間小金次

【頭には越路の雪を戴き、額には青海の波、腰には梓の弓を張り、いつしか姿も翁と化し】つむりにはこしじのゆきをいただき、ひたいにはせいかいのなみ、こしにはあずさのゆみをはり、いつしかすがたもおきなとかし) (講談・柳生二蓋笠「久々に父の面を見上ぐれば、頭には越路の雪を戴き額には青海の波腰には梓の弓を張り、いつしか姿も翁と化し」)

【爪で拾って箕でこぼす】つめでひろってみでこぼす)「爪デ拾ウテ箕デコボス」箕デアケルともいう。収得する所少くして、費消する所大なるに喩う。(講談・明智三羽烏「若し二つでも跨いで登らんとすれば、踏み外します、登れません。大取りより小取りをしろ、爪で拾ツて、箕でこぼす」)

【爪で灯をともして貯めた親の子が蝋燭で読む傾城の文】つめでひをともしてためたおやのこがろうそくでよむけいせいのふみ)「爪ニ火ヲトモス」蝋燭の代りに爪に点火するばかり吝嗇なるをいう。──【諺語大辞典】(落語・親子茶屋「爪で灯をともして溜めた親の子が蝋燭で読む傾城の文……ええことが言うてございますナ、親父さんが一生懸命はたらいて身代をこしらえると、そこには、極道息子ができあがる」)爪に火をともす(「毛吹草」にもある)→《い》

爪の垢を煎じて飲ませる】(つめのあかをせんじてのませる)「爪ノ垢デモ煎ジテ飲マセタイ」あやからせたいとの意。──【諺語大辞典】(落語・青菜「あの奥さまの爪の垢でも煎じて飲ませてやりてえね」)

【強いばかりが男じゃない】つよいばかりがおとこじゃない)「強いばかりが武士ではない」戦いに強いだけが武士の真価ではない。真の武士は情けを知ることもたいせつであるということ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・清水次郎長「手前餘り人が良過ぎるぞ。強いばかりが男ぢやアねえや、少しは考えろ」)

面ァ洗って出直して来い】(つらぁあらってでなおしてこい) 罵倒句。(講談・清水次郎長「なにをいやがる。面ァ洗って出直してこい」)

【釣り合わざるは不縁の元】つりあわざるはふえんのもと)「ツリアハヌハ不縁ノ基」貧福貴賎相応せざる縁組は不結果に終るとの意。──【諺語大辞典】(落語・おせつ徳三郎〜刀屋「よく考えてごらんな、『釣り合わざるは不縁のもと』と昔から譬えをいうだろう」)落語:熊の皮、ざこ八、紙入れ、長崎の赤飯、塩原多助一代記 講談:田宮坊太郎、山中鹿之助、安中草三郎、富蔵藤十郎

【釣針のようなかしくで客を釣り】つりばりのようなかしくできゃくをつり)(落語・たちきり「釣針のようなかしくで客を釣り……かしくという字で、客釣れるんですね」)

【鶴亀鶴亀】つるかめつるかめ)不吉な事などがあったとき、それを払いのける縁起なおしに唱えることば。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・近日息子「アツ置いてきちまつた弱つたなア、こんな物を店先きへ列べて行きやァがつて、仕様がねえ、アゝ鶴亀鶴亀」)落語:らくだ

【剣の下は潜れるが、理解の下は潜れない】つるぎのしたはくぐれるが、りかいのしたはくぐれない)「剣の下はくぐるとも理合の下はくぐるな」(「理合」は道理、理屈)暴力には対抗できても、道理にはさからえないということ。──【故事俗信ことわざ大辞典】道理を破る勿れとの義。──【諺語大辞典】(講談・夕立勘五郎「勘五郎腕を組んで聞いて居つたが、劍の下は潜れるが理解の下は潜れない、成る程是りやア尤もの話しだ」)講談:清水次郎長

【鶴は千年、亀は万年】つるはせんねん、かめはまんねん)鶴と亀は、先年、万年の寿命を保つという、「淮南子・説林訓」などに見える中国の伝説から出たことば。長寿でめでたいことをいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・浮世根問「鶴は千年、亀は万年の齢を保つ、これも長生きをするめでたい動物だなァ」)

【詰んでるに肺肝砕くへぼ将棋】つんでるにはいかんくだくへぼしょうぎ)(落語・碁どろ「そうかと思うと、詰んでるに肺肝砕くへぼ将棋……なんてえのもございまして……もう、本当に動けなくなるまで逃げようてんですからな」)

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