増補・話芸きまり文句辞典

落語・講談によく出ることば(改装中)

【侫弁邪智】ねいべんじゃち)「佞弁」心がねじけていて口先のたくみなこと。「邪智」よこしまな知恵。わるぢえ。──【広辞苑四版】 お家騒動に出てくる悪い家老などをこう表現するのが常。(講談・由井正雪「山師であれば尚更、佞辯邪智を以てお前を惑はし」)講談:山中鹿之助、慶安太平記、加賀騒動

【願ったり叶ったり】ねがったりかなったり)「願ウタリ叶ウタリ」志願せる如く事の叶うをいう。──【諺語大辞典】(落語・天神山「あてのようなお多福でも、嫁はんにしてくれはったら、願うたり叶うたりやが」)落語:庖丁 講談:赤穂四十七士伝、関東七人男

【寝首を掻く】ねくびをかく)卑怯なる謀もて人を欺き陥るゝに喩う。──【諺語大辞典】(講談・清水次郎長「次郎長初め河豚に中つて患つてゐるといふ噂を聞き、寝首を掻きに來るとは太い奴等だ」)落語:夏泥 講談:小金井小次郎

【寝こかし】ねこかし)連濁で「ねごかし」とも。1.寝かせたままでうっちゃっておくこと。2.相手をうっちゃったまま眠ってしまうこと。(落語・王子の狐「マア酷いじやァないかね、妾を寝こかしにしてさ……」)

【猫じゃ猫じゃとおしゃますが、猫が下駄穿いて絞りの浴衣で来るものか】ねこじゃねこじゃとおしゃますが、ねこがげたはいてしぼりのゆかたでくるものか) 寛政末から享和にかけての流行唄。踊りもある。「猫じゃ猫じゃとおしゃますが、下駄穿いて杖ついて、絞りの浴衣で来るものかチョイチョイチョイチョイ」幕 末にかけて再度流行し、囃子詞を「オッチョコチョイノチョイ」といったので「おっちょこちょい節」とも呼ばれた。──【江戸語の辞典】 「猫」は芸者の異 称であるという。「おしゃます」は「ものを言うこと」を揶揄した言い回し。(講談・傑僧坦山「猫ぢや猫ぢやとおしやますが、猫が下駄履いて、絞の浴衣で來るものか」)

【猫に鰹節】ねこにかつぶし)猫の近くに猫の大好物である鰹節を置くこと。好物をそばに置いて、油断ができないこと。あやまちが起こりやすい状況であることのたとえ。また危険であることのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・真景累ヶ淵「それはいかん、猫に鰹節で、何事がなくつても、店の者や出入の者がをかしい噂でも立てると店の爲にならぬから」)落語:泣き塩、蜀山人 講談:金田屋お蘭、新吉原百人斬り

【猫に小判】ねこにこばん)猫に高価な小判を与えること。高価なものを与えても、何の反応も効果もないことのたと え。また、どんなに貴重なものでも、その価値がわからない者に与えては、何の役にも立たないことのたとえ。豚に真珠。猫に石仏。──【故事俗信ことわざ大 辞典】(講談・曾呂利新左衛門「茶道に心得のない新左、世にいう猫に小判と同様にござりますれば、お手許へ差し上げまする」)《い》講談:寛永三馬術

【猫は器が変わると飯を食わない】ねこはうつわがかわるとめしをくわない)(落語・猫の茶碗「猫なぞが食物の器が変ると食べないから、此の小僧が今まで食ひ慣れた其の皿を附けて貰いたい」=猫の皿)

【猫はただ貰うもんじゃない】ねこはただもらうもんじゃない)「猫ノ子モタダハ貰エヌ」何事にも報酬の要あるをいう。──【諺語大辞典】(落語・猫の皿「ね、『猫はただ貰うもんじゃねえ』っていうからな」)

【猫は魔の者(夜出て踊る)】ねこはまのもの)(落語・猫久「猫は魔物だっていうけどさ、まったくだよ、あんな野郎でも怒ることがあるんだねエ」)落語:樟脳玉、猫久、猫定、蚊いくさ

【猫を被る】ねこをかぶる)自己の本性を掩いかくして、うわべの言行を飾るようの行をいう。──【諺語大辞典】(講談・小金井小次郎「それぢやア俺は猫を被つて、小次郎といふことを此處で名乗るまい」)

【猫を焼き殺すと七代祟る】ねこをやきころすとしちだいたたる)「猫ヲ殺スト七代祟ル」俗信。──【諺語大辞典】(落語・火事息子「え? 猫を焼き殺すと七代たたるッて? なにをくだらねえことをいってんだ……」)

【ねじめを決める】ねじめをきめる)1.覚悟を決める。決心する。2.財布の紐を固くする。──【江戸語の辞典】(講談・安政三組盃「早速お朝の方のねじめを極めよう」)

【鼠も用ふる時は虎の勢いをなす】ねずみももちうるときはとらのいきおいをなす)(講談・加賀騒動「虎は千里を行つて千里を歸る猛獣なれば、用ゐる人なき時は鼠に等しい。鼠も用ふる時は虎の勢ひをなす」)

【根っ桐葉っ桐これっ桐】ねっきりはっきりこれっきり)「根っ切葉っ切」(根切り葉切りの強調促呼)是っきり。残るところまったく無し。悉皆。根絶。──【江戸語の辞典】(落語・骨違い「なにしろ、根ッきりはッきりこれッきりてえんだ、家中の物を引ッ浚らッてこれっきりしかねえんだ」)落語:出来心、おせつ徳三郎〜花見小僧、骨違い 講談:旗本五人男、祐天吉松、富蔵藤十郎

【寝ている子を起こす】ねているこをおこす)「寝た子を起こす」やっとおとなしく寝た乳児を、無用に起こして泣かす。せっかくおさまっている事柄に無用の手出しをして、問題を引き起こすことのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・清水次郎長寝ている子を起こすようなことをいい出しやァがった」)

【寝ている時は、魂は遊びに行っている】ねているときは、たましいはあそびにいっている)(落語・正直清兵衛「人を起こすにはモツト静かにするもんだ。寝て居る時は、魂ひが遊びに行つてると云はア」=もう半分)

【寝ては夢起きては現幻の】ねてはゆめおきてはうつつまぼろしの)(落語・目黒のさんま「“寝ては夢起きては現幻の…”ッてんで、秋刀魚に恋いこがれる……」)落語:薬違い、八百屋お七、宿屋仇、不動坊

【寝耳に水】ねみみにみず)「寝耳に水の入る如し」(元来は眠っている時の耳に水音が聞こえてくることをいったが、 のち、水が実際に耳にはいると解されるようになった)寝ている耳に水を注がれるような、まったく思いがけないできごと。また、不意の知らせを聞いて驚くた とえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・清水次郎長「おれは寝耳に水で、さっぱり見当がつかねえんだ」)

【寝る子は育つ】ねるこはそだつ)よく寝る子は、健康で大きく育つ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・湯屋番「<寝る子は育つ>てえ譬があるが、この上育っちまった日にゃアしょうがねえな……」)落語:小言幸兵衛

【根を絶って葉を枯らす】ねをたってはをからす)根を断ち切って葉を枯らしてしまう。わざわいのもとを、残りなく取り除く。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・笹野名槍伝「イヤ、お止め下さるは恭なけれど、根を絶つて葉を枯すの譬へ」)講談:幡随院長兵衛、三家三勇士、小金井小次郎

【年貢を納める】ねんぐをおさめる)「年貢ノ納メ時」悪事をなしゝ者の、其罰をうくばく時機なりとの意に用う。──【諺語大辞典】(講談・関東七人男「おとなしく御年貢を納めろ」)

年代記にのる】(ねんだいきにのる)「年代記」1.通俗歴史年表、2.さまざまな事の書いてある書。珍しい事の書いてある書の代表書とされる。──【江戸語の辞典】編者注:「それに載るくらいの椿事」。(講談・寛永三馬術「こういうことはきっと年代記にのるくらいのものだ」)

【ねんねである】ねんねである)「ねんねえ」(寝寝)おぼこい少年・少女。──【江戸語の辞典】(落語・文七元結「ええ、ま、からもうねんねでござんすからねえ」)講談:安政三組盃

【年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず】ねんねんさいさいはなあいにたり、さいさいねんねんひとおなじからず)毎年毎年花は同じように咲くが、人の世は年とともに変わり、生まれる者があれば死ぬ者があって、同じ顔ぶれは続かない。自然は変わらなくても、世間は変化すること、人の世のはかなさをいう。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・山内一豊出世の馬揃い「桜が盛りじゃな。年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず。こうして時が来たれば花は開くが、この一豊にはいつ花の咲く春が来ることであろうか」)

【年百年中】ねんびゃくねんじゅう)一年中の強調語。いつも。常に。──【江戸語の辞典】(落語・文七元結年百年中襤褸へばかりくるめておいて……」)

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