増補・話芸きまり文句辞典

落語・講談によく出ることば(改装中)

【目明き千人盲目千人】めあきせんにんめくらせんにん)世間には具眼の人もあれば、無識の者もありとの意。──【諺語大辞典】(講談・朝顔日記「イヤ世の中は廣大無邊、眼明千人盲目千人と申すが妙なもので」)講談:慶安太平記

【名家に二代なし】めいかににだいなし)「名家三代続カズ」「長者二代ナシ」ともいう──【諺語大辞典】名家と言われる家も、二代目あたりになると人物が劣り、三代と続かない。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・相馬大作名家に二代なし、その家もいまは絶えているが、南部さまはその尾崎がいたらと、たいそう歎かれていたそうだが」)

【名玉も泥中にあれば石塊同然】めいぎょくもでいちゅうにあればいしころどうぜん)(講談・男くらべ「うん名玉も泥中にあれば石塊(いしころ)同然、馬鹿馬鹿しくつて話にも何も成らんわ」)

【明君の下に愚臣なし】めいくんのもとにぐしんなし)「名将の下に~」とも。あるいは「名君の下に愚人なし」(落語・嵩谷)とも。(落語・目黒のさんま「明君の下に愚臣なしで、年若の侍でありますが、百姓論じ詰めたる理に服したものか」)落語:嵩谷(「〜愚人なし」)

【名月や池をめぐりて夜もすがら】めいげつやいけをめぐりてよもすがら松尾芭蕉(一六四四~一六九四)の句。(講談・岩見重太郎「名月や池をめぐりて夜もすがら。名島本城の御殿、御庭前をくまなくてらす」)

【名月や畳の上に松の影】めいげつやたたみのうえにまつのかげ)宝井(榎本・宝晋斎)其角(一六六一~一七○七)の句。(落語・風呂敷「名月や畳の上に松の影……月のために松の影が畳へ写っているという、実にいいもんですな」)

【名人上手は仕事を嫌がる】めいじんじょうずはしごとをいやがる)(講談・昆寛狐の由来「名人上手は仕事を嫌がるといひますが、どうも生きた仕事をしようとするには、金は二の次、自分の氣の向いた時に慾を離れなければいけないやうで」)

【名人と上手には天地ほどの差がある】めいじんとじょうずにはてんちほどのさがある)(講談・寛永三馬術名人と上手は天地ほどの差があるものでございます」)

【名人は国の宝】めいじんはくにのたから)(講談・柳生二蓋笠「名人は国の宝。老後に及び名人を作りまことに満足に心得る」)

【名人は上手の坂を(上を)一登り】めいじんはじょうずのさかを〔うえを〕ひとのぼり)(落語・梅の春「名人は上手の上を一上りと申しまして、昔から上手はございますが、名人は出来ませんもの」)落語:竹の水仙、梅の春、嵩谷 講談:浜野矩随

【冥途黄泉の客】めいどこうせんのきゃく)「冥途」死者の霊魂が迷い行く道。また、行きついた暗黒の世界。冥界。黄泉。黄泉路(よみじ)。──【広辞苑四版】(講談・山中鹿之助「私し先年尼子九郎左衛門の奸計に陥り、遂に冥途黄泉の客とならんといたしましたるところ」)講談:紀伊国屋文左衛門

【命は食にあり】めいはしょくにあり)生命は食物によりて繋がる。──【諺語大辞典】 「いのちは~」とも読む。「毛吹草」にもある。(落語・そば清「命は食にありとか申しまして、余り暴食をする者に怜悧(りこう)はない様で」)講談:梁川庄八

【名馬ほど火を恐れる】めいばほどひをおそれる)(落語・厩火事「どうしてうごくことか、名馬ほど火を怖れる、だんだん、だんだん家来の方で引きずられてく」)

【名物にうまいものなし】めいぶつにうまいものなし)名の実に副わざるに喩う。──【諺語大辞典】 「名所に見所なし」ともいう。(落語・播州巡り「名物甘味えものなしと云ふ比喩があらアな」)講談:水戸黄門、小金井小次郎

【迷惑な顔は祭りで牛ばかり】めいわくなかおはまつりでうしばかり)(落語・百川「迷惑な顔は祭で牛ばかり……という川柳がございますが」)

【夫婦になってみれば亭主のものは女房のもの、女房の物は亭主のもの】めおとになってみればていしゅのものはにょうぼうのもの、にょうぼうのものはていしゅのもの)(落語・転宅「夫婦になってみれば亭主のものは女房のもの、女房のものは亭主のものだよ」)

【めかけてかけ】めかけてかけ)「」目を掛ける意。正妻のほかに持つ妻。「手掛け」めかけ。──【江戸語の辞典】「〜は男の働き」とも。(講談・安政三組盃「親の口から、妾てかけにいってくれろ、とは言いにくいけれども」)

【目が覚めてみれば眠った親の恩】めがさめてみればねむったおやのおん)(講談・清水次郎長「それだから月に一遍ずつは俺ァ墓詣りに行くんだ、目が覺めて見れば眠つた親の恩、アゝ親は有難えと思つたら石松、お父さんのお蔭だと思つたら、森の要傳寺へ行つて、兩親の石塔でも嘗めろ」)

【目から鼻へ抜ける】めからはなへぬける)「目カラ入ツテ鼻ヘ抜ケル」怜悧機敏なるをいう。──【諺語大辞典】(落語・大仏餅「はあ、食べたのが大仏餅、目から鼻へ抜けた」)落語:妾馬、代脈、大仏餅、鹿政談 講談:祐天上人、笹野名槍伝、太閤記、野狐三次、水戸黄門〜出世の高松、加賀騒動

【目が横に切れる】めがよこにきれる)「横に目が切れる」識別する力がある、分別があることをいう。目が明いている。──【故事俗信ことわざ大辞典】(講談・清水次郎長横に切れた野郎だな。何でも知りきってやがる」、安政三組盃「馬鹿をいえ、俺の眼は横に切れている」)講談:安政三組盃

【目腐れ金】めくさりがね・めくされがね)少額の金を罵っていう語。──【江戸語の辞典】(落語・土橋萬歳「そんな目腐れ金、誰が欲しいか」)講談:旗本五人男

目糞鼻糞】(めくそはなくそ)「目糞、鼻糞を哂(わら)う」の略。自分の欠点には気づかないで、他人の欠点をあざ笑うことのたとえ。──【広辞苑四版】「猿ノ尻笑ヒ」と同義──【諺語大辞典】(講談・天明白浪伝〜悪鬼の万造「神道徳次郎じゃねえか、てめえは。目糞が鼻糞を哂うようなもんでえ」)

【目くじらを立てる】めくじらをたてる)目に角を立てる。些細な事を咎めだてする。──【江戸語の辞典】くじらは目の端のこと。(落語・子別れ「然う乃公が口を利く度びに眼くじら立てガミガミ云はれちやア困る」)

【盲目蛇に怖じず】めくらへびにおじず)略して盲蛇とばかりもいう。恐るべきを知らざる者は恐れず。──【諺語大辞典】 「盲蛇物に怖じず」ともいう。「毛吹草」にもみられる。(講談・宮本武蔵「武蔵の腕が分らない、盲目蛇物に怖ぢずとは此事」)卓越:算段の平兵衛

【飯では済まぬ物の扱い】めしではすまぬもののあつかい)(落語・備前徳利「目出度に付け酒、悲しいに付け酒、飯では済まぬ物の扱いとか申しますが」)

【飯一口話一口旅がえり】めしひとくちはなしひとくちたびがえり)(講談・三家三勇士「旅から戻って来た心持の句に『飯一口話し一口旅がえり』というのがございます」)

【飯盛りも陣屋くらいは傾ける】めしもりもじんやくらいはかたむける)(落語・唐茄子屋「『飯盛りも陣屋くらいは傾ける』と吉田の兼好という人がそんなことを言っておりますが」)

【目褄を忍ぶ】めつまをしのぶ)「目褄」「めづま」と濁らぬ。目の端の意。人の見る目。人目。──【江戸語の辞典】(講談・伊賀の水月「父の目褄を忍んで、よい仲となってしまいました」)

【目に一丁字もない】めにいっていじもない)(「丁」は「个(個・箇)」の誤用で、「一丁字」は一つの文字)文字が一つも読めない。無学文盲である。一丁字をしらず。──【故事俗信ことわざ大辞典】、「一丁字ヲ識ラズ」文字を全く知らぬこと、イロハノイノ字モ知ラヌという如し。──【諺語大辞典】(落語・らくだ「昔は目に一丁字もない、これァ実に、したい放題のことをしまして」)

【目には目を、歯には歯を】めにはめを、はにははを)「目には目、歯には歯」目を傷つけられれば、傷つけた相手の目を害する。歯を折られたら、折った相手の歯を折る。自分が受けた害に対して、同様な仕返しをするたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・紀州飛脚「さあ、目には目を、歯には歯を、という諺がある」)

【目のあるところへ玉が寄る】めのあるところへたまがよる)「目ノ寄ルトコロヘ球ガ寄ル」眼動けば眸子も亦随うて動くとの意にて、同類相牽引するに喩う。──【諺語大辞典】(講談・左甚五郎「ところが目の寄るところへ玉とやら、またその筋向かいに、仕立屋の名人で、藤助という人が住んでおります」)講談:伊賀の水月、伊達誠忠録、笹野名槍伝、渋川伴五郎、寛永御前試合、西郷南洲、本所五人男、関東市チニの床、寛永三馬術 「目の寄る〜」落語:永代橋、乳房榎

【目の上の瘤】めのうえのこぶ)痰瘤ともいう。目ざわりとなりて、うるさく感じられるる意より、おのれの邪魔となるものに喩う。──【諺語大辞典】(講談・関東七人男「今のところ俺のためにはあの林蔵が目の上の瘤だから」)《い》

【目の正月】めのしょうがつ)「目ニ正月ヲサス」ともいう。目に楽しきものを見るをいう。──【諺語大辞典】(落語・質屋庫「おおきに、目の正月さしてもらいました……」)

【目の中に入れても痛くない】めのなかにいれてもいたくない)鍾愛の意。──【諺語大辞典】(講談・面割狂言「之が又評判の美人、夫婦は眼の中に入れても痛くないといふ可愛がりかた」)

【目八分に捧げる】めはちぶにささげる)物を捧げ持つ時に両手で目より少し低い高さに持つさま。──【広辞苑四版】(講談・寛永三馬術「うやうやしく目八分に捧げて、伊豆守の前へまいりました」)

【目は人間の眼】めはにんげんのまなこ)「目は人の眼」目はその人の人柄をもっともよく現わす所である。──【故事俗信ことわざ大辞典】(落語・義眼「だから肝心なものは、顔のうちじゃァ目がいちばん肝心だということを、“目は人間の眼”というぐらいなもんですからたいへんなもんでございます」)

【目曳き袖曳き】めひきそでひき)目にて知らせ、袖ひきて合図すること。──【諺語大辞典】(講談・梁川庄八「侍が刀を擔いで居る、其の風が可笑しいから、目曳き袖曳きして、笑つて居ります」)講談:天保六花撰

目よりも高く差し上げる】(寛永御前試合「うーんというと目よりも高く軽々差し上げ」、猿飛佐助「さしも大兵肥満の清海入道を目よりも高くさし上げ」うそつき弥次郎「岩へ手をかけると、目よりも高くさしあげた」)

【メリが立つ】めりがたつ)「メリ(減・乙)」1.減ること。出費。損失。2.賄賂。挨拶金。3.邦楽で、基本の調子(音高)より少し低く下げること。「〜が立つ」だんだん少なくなる。減少する。損が出る。──【故事俗信ことわざ大辞典】「めりを引く」(講談・清水次郎長)は、収入から経費を引くことであろう。(講談・天明白浪〜八百蔵吉「イヤ小言は云はねえが聞けばまだ御部屋住みだと云ふから無駄の御散財のないやう、茶屋小屋遊びをなすっては却々お前メリが立つ」)

【目を掩いて雀を捕え、耳を塞ぎて鐘を盗む】めをおおいてすずめをとらえ、みみをふさぎてつりがねをぬすむ)「目ヲ掩イテ雀ヲ捕ウ」=「耳ヲ掩ウテ鈴ヲ偸ム」自己の過失を聞くことを忌むに喩う。──【諺語大辞典】(講談・慶安太平記「諺語に云ふ目を掩うて雀を捕へ、耳を塞ぎて鐘(つりがね)を盗むと」)

【免許を取るより度胸を取れ】めんきょをとるよりどきょうをとれ)(講談・横谷珉貞「とつくにお前の方から、金の彫物をさせて下さいと言ふのが度胸だ。免許を取るより度胸を取れと云ふ譬へもある」)

【牝鶏が晨するときはその家亡ぶ】めんどりがときするときはそのいえほろぶ)「雌鶏うたえば家亡ぶ」めんどりがおんどりに先んじて朝の時を告げるのは不吉な兆しである。妻が夫に代わって権勢をふるうような家はうまくゆかず、滅ぶものであるというたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】「ひんけい があしたするときは~」とも読む。(講談・野狐三次「こゝは横山町三丁目、秋田屋作兵衛という呉服太物屋の奥座敷だよ、裏店や小店じゃァないよ。牝鶏が晨(とき)する時はその家亡ぶのたとえ」)

【牝鶏すすめて牡鶏ときをつくる】めんどりすすめておんどりときをつくる)【意味】夫が妻の言いなりになること。妻の意見に動かされることのたとえ。──【故事俗信ことわざ大辞典】 「毛吹草」に「めん鳥につゝかれて時をうたふ」とある。(講談・阿武松緑之助「『今のうちに早く暇を出した方がいいよ』『雌鶏すすめて雄鶏時刻』という譬え……」)落語:湯屋番、お七、髪結新三、阿武松、立波、素人占い、氏子中 講談:阿武松緑之助、両越大評定、塚原ト伝、小猿七之助西郷南洲

【面を被る】めんをかぶる)恥ずかしくて顔を隠す。恥を忍ぶ。──【江戸語の辞典】(講談・小金井小次郎「面を被つても關田の旦那に縋つて堅氣にならなければならないと思つて」)

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